不動産基礎知識

競売物件に内包されるリスクについて

競売は裁判所で行われますが、競売特有の事情により不動産会社の仲介による不動産売買とは異なる点が多くあります。
これらの異なる点が競売物件のリスクとして内包されることとなり、そのリスクが競落価格に反映されることとなります。この競売物件のリスクについて今回は考えてみたいと思います。

競売物件のリスク
競売物件には次のようなリスクが認められ、これらが競落価格に影響を与えていると考えられます。

物件調査の制約
競売物件についての調査は、入札希望者が自ら行わなければいけません。裁判所から提示される「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」の3点セットをもとに現地に赴き、周辺の環境から、競売物件の状況などの確認を行うこととなります。入札までの期間も短く不動産の専門家ではない場合には、調査漏れなどのリスクを負うことになります。

また、通常の売買であれば、内覧といって売買の対象となる不動産の建物の中なども確認できるのですが、通常、競売ではそれが行われません。このため入札希望者は、建物の中の状況については3点セットに付属している写真などから判断をせざるを得ず、確認が出来ない状況で入札するというリスクを負うこととなります。

瑕疵担保責任が認められない
競売物件では通常の売買と異なり瑕疵担保責任を追求することが出来ません。したがって落札後に物件の欠陥に気が付いたとしても修繕費などは落札者が負担しなければなりません。物件の内覧も出来ないことから事前の発見は難しく、大きなリスクとなります。

物件引き渡しの問題
競売物件は落札してもすぐに利用できるとは限りません。明渡しに非協力的な占有者がいる場合には明渡しの交渉をしなければいけません。条件が整えば裁判所から引渡命令を得て、強制執行という手続きも踏めますが、費用と時間がかかることになります。占有者がいる場合にはこのようなリスクもあることを認識しておかなければいけません。また、ここで話がこじれてしまうと競売物件に嫌がらせをされたりするリスクも出てきます。

その他
このほか競売は入札しても必ず落札できる訳ではないため、物件の調査に要した時間や費用が無駄になるかもしれないというリスクも抱えています。

入札価格に織り込まれる競売物件のリスク
競売物件には通常の売買と異なるリスクがあるために入札価格はこれらのリスクを織り込んだ価格となります。特に瑕疵担保責任が追及できないことと落札後の占有者の明け渡しに関するリスクは大きなものです。
このため競売不動産の価格は安くなる傾向が強いのですが、任意売却であれば買い手のリスクは通常の売買に近い水準となるために一般市場と近い価格水準で売買が成立する可能性が高くなるのです。

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