任意売却

競売による賃貸借契約の取り扱いは注意

競売物件に賃貸借契約が付いている場合があります。競売物件を購入する買受人としては、賃貸借契約をどう対処すべきかが、問題になってきます。このような場合の民法の判断について紹介しましょう。

「賃貸借契約」改正前の解釈

1-抵当権の設定登記の前から賃貸借契約について
登記の前に「賃貸借契約」が成立している場合には、「賃借権」は優先する抵当権となり、競売による影響がないとして、競売の「買受人」に契約の主張ができるので、契約期間の長さに関係しません。賃借権の「対抗要件」とは、借りる権利を主張できる法律ですが、土地の場合は、賃借地上の「建物の登記」です。建物に関しては「引渡し」に対して主張できる権利になります。

2-抵当権の設定登記の後に締結された賃貸借契約について
短期賃貸借に該当する事については、建物では3年以内、土地においては5年以内の契約です。競売によって所有者が変更されても、契約期間内の権利としては賃借権を主張が可能になっていました。

「短期賃貸借の保護」として競売された事で、ただちに物件から立ち退く事を保護しています。この法律は、抵当権が設定された不動産を借りる人がいなくなる為に、民法が抵当権と不動産利用権の調和する関係を保って、短期の賃借権に限って保護をしていました。これは、競売で代金を支払った後でも、契約期間を過ぎると立ち退かなければならないものでした。

3-競売開始決定による差押え登記より後の賃貸借権について
この場合の賃貸借権においては、抵当権のある者と競売の買受人の対抗できる権利は、まったくない事になります。「差押え」の効力が新たに権利を設定する事や、勝手に処分できないようになっているのです。

※短期賃借権は、契約に更新においては不可となっています。

改正前の制度の悪用

短期賃貸借の保護制度は、民法が意図したものとは異なった弊害をもたらしました。競売による売却を妨害する手段として悪用するもので「占有屋」と呼ばれて、競売の買手を妨害してきました。賃借人としての実体を持たない行為で弊害が多い事で、「短期賃貸借の保護を廃止」する事が、民法の改正で決定されました。

改正後の賃貸借契約について

1-抵当権の設定前の賃貸借契約は、いつまでも「抵当権」に対抗できるもので、競売後に明け渡しはできない事とします。

2-抵当権の設定後の賃貸借契約は、契約期間中の競売の代金支払いによる「買受人」と、契約期間後の「買受人」に対して、対抗できる権利がなくなる為、6か月の猶予の後には、簡易的な引き渡し命令が出される事で強制的な立ち退きとなります。

3-競売の「買受人」は「競落人」と呼ばれています。「競落人」は、賃貸借契約に対して、敷金返還義務を競売によって引き継ぎません。明け渡し猶予期間中の賃料は、賃借の行為として「競落人」に支払わなければいけません。

賃貸借契約と買受人の優先度

1-賃借権が付いている競売物件について、現在住んでいる人との契約は、どうなるのでしょうか。この問題は、「賃借権が買受人に対抗」できるか否かで、判断が異なります。抵当権設定登記前に建物の契約している場合には、賃貸借契約が終了するまで権利を主張できますので、買受人が、競売物件の所有をいい事に、好き勝手に使用する事ができないのです。逆に、賃借権を対抗できない場合には、賃借人を退去させる事が可能なので、その後に自由に使用できます。

2-競売での落札した物件では、賃借権が付いている場合の家賃の支払いを受ける事が可能です。

3-保証金が2か月分残っている場合に、住んでいる賃借人が出て行く時にどうすべきか。
賃借人が買受人に賃借権を対抗できない場合には、買受人が保証金返還債務は、引き継がないので、元の契約者が責任をおうべきです。「賃借人が買受人に賃借権を対抗できる場合」では、保証金が敷金の役割を持っている場合には、競売の買受人が保証金返還債務を受け継ぐことになります。2か月分の保証金を支払う事になります。ただし、保証金が、消費する形態の契約であれば、新しい所有者に引き継がれません。

まとめ

競売による賃貸借契約の取り扱いは、抵当権の設定登記の前と後で権利が異なりますし、その他にも、契約の猶予期間や、家賃の支払いなどにも、注意が必要です。賃貸借契約の取り扱いは、競売の購入者に有利かどうかを判断して臨むべきなのです。民法による正確な判断は、弁護士の指示をあおぎましょう。

競売に関する事や不動産の投資の事なら全ておまかせ、ご相談も「アブローズ」までご一報を下さい。

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