相続が発生すると相続人で遺産分割協議が行われて、協議内容に相続人全員が同意することで遺産分割が行われます。しかし、後から新しい財産が見つかったというケースだけでなく、後になって遺産分割協議の内容に不満があることを理由に遺産分割協議のやり直しを求めるというケースがあります。
遺産分割には時効といったようなものが適用されることは無いのでしょうか。
■時効とは何か
時効とは、一定の事実状態が一定期間継続した場合において、この事実状態を尊重して実際の権利関係が事実状態と異なっていたとしても、事実状態に合った権利の取得や喪失を認めるという制度です。相続の遺産分割協議において言えば、遺産分割のやり直しをすることを請求する権利が消滅するということなのでしょう。
遺産分割協議で合意をしている以上、よく考えたら不満が残る内容であったためにやり直すことを請求しても認めらないというのが一般的です。
■時効と関係無くやり直し可能なケース
しかし、遺産分割協議の内容に明らかに間違いがあったり、新たな遺産が見つかり当該遺産について分割を行ったりする場合など相続人全員の合意があれば遺産分割協議のやり直しをすることが可能です。このケースであれば時効とは関係なく、遺産分割協議から何年経過していても構いません。
なお、遺産分割調停や遺産分割審判によって遺産分割が行われた場合には調停や審判による分割となるために特別な事情が無い限りは遺産分割のやり直しをすることはできません。
■民法と税法
民法上は遺産分割協議で決められた分割も相続人全員の合意があれば合意解除によって時効とは関係なく遺産分割をやり直すことができることが分かりましたが、税法上で大きな注意点が発生することになります。一度行われた遺産分割を合意解除によってやり直しをする場合には、税法上の取り扱いは相続ではなく、贈与または譲渡として取り扱われることになるのです。
贈与税は一般的に相続税よりも高い税金を課されます。また、譲渡に該当するとなれば譲渡所得税が発生します。これらは一旦行われた遺産分割協議による分割は有効であり、合意解除によってやり直すこととなったとしてもその有効性までが否定されるものではないと考えられているためです。
ただし、遺産分割協議が脅迫や詐欺によって行われたものであるなど、そもそもの合意が無効であったり、取消が認められるものであったりすれば贈与税などは適用されず、相続税の対象となります。
遺産分割協議のやり直しは時効が関係ないといっても上記のように注意すべき点がありますので税理士に相談するなどして慎重に行う必要があります。