裁判所で行われる不動産競売で入札を行った結果、通常一番高い価格が落札価格となります。一番高い価格を入札した買受人は、落札価格と事前に納めている保証金との差額の支払いを行いますが、他に費用が掛かることはあるのでしょうか。
競売物件の落札価格の決定
裁判所で行われる不動産の競売は、期間入札という方式で行われます。裁判所が1週間程度の期間を設定し、競売物件の買受を希望者はその期間に入札を行います。なお、この入札を行うためには、事前に保証金の振込を行っておく必要があります。この保証金の金額は、売却基準価額の10分の2以上の金額でないといけません。売却基準価額が1000万円であれば、保証金は200万円となりますので入札を行うだけでも結構な大金を用意しておかなければいけません。
開札期日に執行官によって最高価買受申出人が決定され、後日、裁判所が売却の許可決定を行うと最高価買受申出人が買受人となり入札した価格が落札価格となります。買受人は所定の期日までに落札価格と保証金との差額を一括で支払わなければいけません。
落札価格以外に必要な費用
落札価格は、競売物件の所有権を取得するだけに過ぎず、競売物件を買受人が使用できる状態にするまでに通常の売買で発生する登記費用や不動産取得税以外に次に挙げるような競売特有の費用が別途発生する可能性があります。
マンションで管理費、積立金、駐車場使用料などの旧所有者の滞納額
滞納された管理費は建物の区分所有等に関する法律により買受人負担と決まっており、積立金、駐車場使用料などは管理規約により買受人負担となるケースが多いです。通常の売買と異なり滞納が発生しているケースは非常に多いです。
旧所有者が預託を受けた敷金、保証金など
競売物件の資料である「物件明細書」に買受人が引き受けることとなる他人の権利について記載があれば、その権利を引き継ぐこととなります。その権利が賃貸借である場合に賃借人が旧所有者に支払った敷金、保証金などの預り金的性格を有する一時金は、賃借人の退去時に買受人が返還することとなります。
居住者退去に要する費用
旧所有者などが居残っている場合に退去させないと買受人は使用することができません。強制的に退去させるために強制執行による退去を断行する場合に費用が発生しますが、この費用を債務者などに請求しても相手にお金が無いため返ってこないケースが多いです。
その他
想定していなかった修繕費などが発生したり、残置物の扱いなどで思わぬトラブルによる訴訟が起こったりすることもあります。
競売の落札価格は他の経費も織り込んだ価格
競売による落札価格が一般市場における売買よりも安くなる傾向があるのは、競売特有の費用が別途発生する可能性があるというのが理由のひとつとなります。入札価格は、このような費用の発生も考慮に入れて決められるのです。住宅ローンの残債のある物件の売却で、任意売却を選択すると競売よりも価格面で有利なのはこのためなのです。