離婚時に協議すべき事項の1つ・財産分与。持ち家など不動産物件を所有する世帯の場合、分与方法の1つとして一方が受け取るケースが考えられます。しかしその場合、名義変更の有無などケースによっては双方に税金支払い義務の発生が想定されます。どういうことなのか見ていきましょう。
住宅の財産分与方法
婚姻関係にある間に取得した資産は、夫婦の共有財産と見なされます。そのため、仮に離婚という事態に至ると、婚姻期間中に形成された財産は原則的に元妻と元夫の双方で半分ずつ分けることになります。結婚後に購入したマイホームに関してもその例外ではありません。
とは言え、1軒の住宅を2つに分割して各々使用するのは、物理的に不可能です。そのため、持ち家の分与に関しては、以下の2通りの手段を取るのが一般的となります。
1つ目に挙げられるのは、どちらか一方が家を受け取る方法です。不動産名義は譲り受ける方のみとなり、持ち家を手放すことになるもう一方はその引き換えに、持ち家の売却評価額の半額を受け取ることになります。
もう1つの分割方法としては、持ち家の売却処分が挙げられます。夫婦で取得したマイホームを売り払い、それによって得たお金を双方半額ずつ受け取るというわけです。
マイホーム引き取りによって生じる税金
離婚に際して、婚姻期間中に購入した住宅を売却せず、どちらか一方に譲渡する方法を取る場合、資産取得に伴い課税対象となります。どのような税金が課せられることになるのでしょうか。
まず初めに、固定資産税や都市計画税など、不動産所有によって毎年発生する税負担を、1人で担うことが挙げられます。これまで夫婦2人に課されていた課税について、離婚後は持ち家を受け取った側一方のみで納税していくことになるわけです。
それ以外に主となるのは、不動産の名義変更に伴って発生する税金です。夫婦で取得したマイホームの名義は、どちらか一方の名義になっている場合と、夫婦2人の共有名義になっている場合の2通りが考えられます。
マイホーム取得時の名義がどのようになっているのか、その条件によっては、登記上の名義変更手続きが必要となるでしょう。その際に登録免許税が発生します。金額としては、不動産評価額の0.4%分となります。
元々の名義人となっている方が家を引き取る場合、名義変更自体が不要なため、登録免許税は発生しません。しかし、名義人に記されていない側が家を受け取る場合、もしくは共有名義となっている場合には、手続きに伴って受け取り側が支払うこととなります。
その他条件によっても、別途税金が発生する可能性が考えられます。離婚時により一方が譲り受ける持ち家について、受け取り時点の評価額が購入時の評価額を上回っていた場合、持ち家を手放す側に譲渡所得税が課されることになります。
また、婚姻中に築いた財産と比較して、持ち家を譲渡される側に分与される財産が多額と見なされる場合、持ち家を受け取る側に贈与税が課されることとなります。
リスクを抑えられる、売却という選択
前項で見た通り、結婚していた間に入手したマイホームをどちらか片方が引き継ぐ場合、税負担がのしかかってくるものと想定されます。そのリスクを回避するには、持ち家に関する分与方法のもう1つの手段に当たる、売却処分が有効です。マイホームを売り払うことで得たお金を2等分し双方で分け合えば、不動産に関連する税金を免れることができます。
本来ならば、不動産売却に伴って税金が発生するケースもあります。不動産の購入費用より高額で売れた際には利益が発生したことになり、その分に関して所得税が課されることになるわけです。
しかし、本人が居住する住宅を売却する際には、それによって購入費用との差額分として利益を得られた場合であっても、3000万円の特別控除が設定されることになります。たとえ離婚に伴って自宅を売り払い、それによって差益が得られたとしても、その金額が3000万円以下であれば課税対象とならないわけです。
このことから、離婚時の住宅に関する分与方法としては、売却という手段を取る方が大いに有利であると言えます。
まとめ
離婚に伴ってマイホームの名義変更などを行う場合には、税負担が伴います。しかし上記で見てきたように、売却処分という方法を取ることで、それら負担を免れることが可能となるわけです。離婚当事者双方にとってダメージが少なく、後のトラブル発展要素を1つ減らす上での有効策と言えるでしょう。