賃貸物件を競売にかける場合、そこに住む住人に対して「立ち退き請求」ができるかどうかは大きな問題です。立ち退き請求ができるかどうかは、抵当権や借家権、賃借権など、様々な権利が絡み合うことで複雑な仕組みになっています。今回は、3通りのケースで説明していきたいと思います。
抵当権とは
3通りのケースを説明する前に、抵当権について説明しておきたいと思います。
民法によると、抵当権とは「債務不履行の場合、担保について他の債権者に優先して弁済を受ける権利」という意味で規定されています。
これを分かりやすく説明すると、銀行などが住宅ローンを融資する際、その土地建物を担保とするために抵当権を設定することがあります。ローンの支払いが滞った場合、抵当権を実行して、任意売却あるいは競売によって債権の弁済を受けることができるというものです。
賃貸物件の場合の抵当権と賃借権について
抵当権について単純な住宅ローンならば、それ程難しくはないのですが、これが賃貸物件だった場合は、物件の所有者だけではなく、賃貸借契約でそこに住む住人の権利についても考慮に入れて、債権の回収を行わなければなりません。
賃借権のうちの借地借家法による規定では、引渡しを行った場合、新しい所有者が権利を引き継ぐ事になっています。既に住んでいる借家人は引渡し後でも、住む為の権利を新しい家主に対して、借家権(住む権利、借りる権利)を主張する事が出来るわけです。
ところが、賃貸物件に住む住人が新所有者に対して、賃借権を主張できないケースがあります。つまり、立ち退かなければならないケースです。
賃借権を主張できるケースと、そうでないケースの違いは、抵当権がつくタイミングの違いからくるものなのです。
賃借権を主張できるケース1
先に賃借権の登記が行われている物件に、後から抵当権が付いたケースでは賃借権が主張でき、立ち退かなくても良いのです。つまり、大家さんは変わるが住人は住み続けてもよいのです。この場合、賃貸借契約も新たな大家さんに引き継がれるため、敷金も返してもらうよう請求をすることができます。
賃借権を主張できるケース2
先に抵当権がつき、後から賃借権が登記された物件で、「任意売却」が行われた場合には賃借権が主張でき、立ち退かなくてもよいのです。この場合ケース1と同様、新たな大家さんに賃貸借契約も引き継がれますし、敷金返還請求権も行使できます。
賃借権を主張できないケース
先に抵当権がつき、後から賃借権が登記された物件で、「競売」が行われた場合には賃借権が主張できません。この場合、住み続けたいのであれば新たな大家さんと賃貸借契約を結ばなければなりません。それが無理である場合には明け渡さなければなりません。これには6か月の猶予期間があります。敷金返還請求権についても、新たな大家さんに引き継がれないため行使することができません。元の大家さんに請求することはできます。
まとめ
賃貸物件の新所有者の立場からいうと「立ち退き請求」ができるケースは、まず、抵当権が賃借権より先についていること、そして「競売」にかけられた物件であることの、二つの条件がそろわなければいけません。
これが、抵当権は先についているが「任意売却」によるケースなら「立ち退き請求」はできないのです。いずれにせよ、複雑な問題もあるのなら、競売に詳しい専門業者に相談することをお勧めします。
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