強制執行によって抵当権の設定が無い不動産を競売にかけるためには、債務名義が必要だと言われます。
債務名義は、当事者の合意などで形成されるものではなく、裁判など司法によらなければならないとのことですが、債務名義とはそもそも何なのでしょうか。
自力救済の禁止
債権者は、返済をしてもらえることを前提にお金を貸しているのですから、返済が受けられなくなってしまったら、返済をしてもらえるように要求することは当然のことです。問題は、この要求の仕方です。
債権者とすれば、大切なお金を貸している訳ですから、多少無理をしてでも例えば債務者が持っているものを取り上げて質に入れてでも返済をしてもらいたいと考えるのも無理はないことです。しかし、裁判などを経ずに債権者が個人の力で強制的に債務者の財産をお金に換えて債権を回収することは、特別な事情が無い限り法律で禁止されています。
この行為を自力救済と呼びますが、これは不法行為に該当する恐れもあります。自力救済を認めてしまうと、力の強い者による債権回収が横行してしまい法治国家の秩序を保つことが困難になるためです。
強制執行に必要な債務名義
債務者の財産を強制執行するためには、裁判などによって得た債務名義という書面が必要になります。強制執行には、主に不動産執行、債権執行、動産執行の3種類あります。
そして、債務名義とは、債権者に対して付与された強制執行によって実現されるべき債権の存在や範囲を公に証明する文書のことです。この債務名義を得るための方法はひとつではなく、債権者と債務者の関係や状態によって最適な債務名義の取得方法が異なることがあります。
債務名義の取得の中で最も分かり易く明確なのは、裁判による確定判決によるものです。裁判で勝訴し、支払命令が出た場合には、この判決正本は債務名義となります。
また、裁判によらずとも、金額などの争いが無く、債権者と債務者の間で合意が出来ている場合には、公正証書が債務名義になります。これら以外にも、即決和解、民事調停、支払督促、少額訴訟などの方法によって債務名義を取得することができます。
債務名義で注意する点
裁判で争って債務名義を獲得するためには、費用と時間が必要になります。そこで簡単に債務名義を取得する方法として、支払督促や少額訴訟という方法があります。
債権者が支払督促や少額訴訟の方法で債務名義の取得を取ろうとしてきた場合には、債務者は定められた期間内に異議申立てを行わなければ手続きが進むこととなりますので注意が必要です。裁判所から書類が送られてきたら放置せずに必ず内容の確認を行い、必要があれば法的な対抗措置を取るようにしましょう。