不動産は一般的に総額が大きくなり、売却の際にも売買契約書を締結し、譲渡所得が発生すれば所得税を納め、登記簿の名義を変更する手続きが必要となるなど一般の商品の売却と比較して手間が掛かります。このような不動産を売却するには年齢制限などがあるのでしょうか。
■不動産と年齢
不動産を当事者として売却するには不動産を所有していることが必要です。不動産の所有には年齢制限はありません。例えば小さな子供であっても相続や贈与などによって不動産を所有することがあります。しかし、不動産を売却する行為となるとどうでしょうか。
日本の法律では年齢が20歳に達するまでは未成年であり、一定の法律行為に制限があり、制限行為能力者と呼ばれ制限に反した行為は取り消されることがあります。不動産の売却も売買契約に伴い所有権が消滅することから制限の対象となっています。したがって制限行為未成年が自分の判断で不動産を売却しても、それだけでは有効な売却行為とはならないのです。
■未成年が不動産を売却するためには
不動産の売却には年齢制限がありますが、未成年による不動産の売却という法律行為を有効なものとするためにはどうしたら良いのでしょうか。まず、未成年の不動産の売却を取り消す事ができるのは法定代理人ですが、売却について法定代理人の同意を得れば未成年であっても契約当事者となって不動産の売却が可能となります。法定代理人とは、法律の規定によって代理権が与えられた者の事を言います。未成年の場合はその法定代理人は原則親権者すなわち親が法定代理人となります。親権者がいない場合には家庭裁判所への申立てによって未成年後見人が選任されます。
なお、未成年であってもお小遣いの範囲内での売買や目的を定めてお金を使うことを許された行為は有効となり、未成年だからといって法定代理人によって当該行為が取り消されることはありません。
■法定代理人による売却
不動産の売却には実質的に年齢制限があることが分かりましたが、未成年が所有する不動産を法定代理人が契約当事者になって売却する場合には未成年者の同意を得る必要がありません。ただし、未成年者の法定代理人であることを証明するために戸籍謄本と住民票が必要になりますので注意しましょう。
不動産の売却行為は取引金額が大きくなることから社会的な責任も大きく、所有権移転の手続き、所得税の確定申告など売買以外にも多くの手続きが必要であるために取引に年齢制限が設けているのです。未成年による不動産の売却や未成年からの不動産の購入をする場合には、その行為が有効であるのかどうかの確認を適切に行い、不測の損害を被ることがない様にしましょう。