任意売却をする際には、必要となる交渉や手続がいくつかあります。その中でも重要となるのが、抵当権者から任意売却の同意を得るための交渉です。なぜ抵当権者の同意が必要なのか、また、抵当権者が複数いた場合の交渉はどのようにおこなうのかをご説明します。
抵当権と抵当権者
抵当権とは、住宅ローンで借りる人が返済できなくなった場合に備えて、住宅ローンを借りるときに、購入する住宅の土地と建物に金融機関が設定する権利のことで、いわゆる「担保」と同じ意味になります。
抵当権は、住宅ローンの契約締結日に設定登記をおこない、ローンが完済されれば抹消の登記をおこないます。
抵当権者とは、抵当権設定契約に基づき、債務者(住宅ローンを借りている側)の所有する不動産に対して、抵当権を設定した債権者(金融機関など)のことをいいます。
近年では、住宅ローンは全額融資ができるため、一つの金融機関から借入をしている方が多いので、抵当権者も一社となりますが、一昔前は8割融資の住宅金融公庫で借りる方が多かったことから、複数の金融機関を利用するため、抵当権者も複数になっていました。
任意売却と抵当権者の同意
住宅ローンの返済ができなくなったからといって無条件で任意売却ができるわけではありません。任意売却をおこなうには、抵当権者である債権者の同意を取り付けることが必要になります。
なぜ、抵当権者の同意が必要なのかというと、任意売却に際して抵当権を抹消する必要があるからです。
法律的には抵当権が付いたままで不動産を売買することはできますが、抵当権が設定されたままの不動産は、いつ抵当権が実行されてしまうかわからないという購入者にとっては大きなリスクとなります。
そのような理由から、購入者がなかなか見つからないということになるので、任意売却をする際には抵当権者の同意が必要なのです。
抵当権者が複数いる場合の同意の取り付け方
抵当権者が複数いる場合は、全ての抵当権者から同意を得なければ任意売却は成功しません。では、どのようにして複数いる抵当権者の同意を取り付けるのでしょうか。
任意売却は、売却額を各抵当権者にどのように配分するかは、話し合いで決める必要があるのですが、抵当権抹消をしてもらうために、抵当権者のハンコが必要となることから、ハンコ代について話し合われます。
ハンコ代は、別名「担保解除料」などと呼ばれたりもしますが、ハンコを押してもらう代金を抵当権者に支払い、任意売却の同意を取り付けます。
ハンコ代は特にいくら支払わなければならないというルールはありません。しかし、ルールが無いことからトラブルになることも多く、そのような事態に備えるために住宅金融支援機構ではハンコ代の一定の目安を示しています。
【ハンコ代目安】
2番抵当権者:30万円または残元金の1割のいずれが低い方
3番抵当権者:20万円または残元金の1割のいずれが低い方
4番抵当権者:10万円または残元金の1割のいずれが低い方
ハンコ代は抵当権者への配分ですので、抵当権者が複数いても、債務の合計額以上で不動産を売却できる人においては、ハンコ代は発生しません。
まとめ
任意売却と抵当権者の関係、抵当権者からなぜ同意をもらわなければならないのか、また、複数の抵当権者がいる場合の同意の取り付け方について見てきました。任意売却を成功させるためには、抵当権者の同意が必要不可欠であることがおわかりいただけたと思います。それには交渉が必要になるので、任意売却に精通した専門家への相談をおこないましょう。
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