競売による不動産の売却価格は、一般市場で成立する価格の7~8割程度の水準といわれています。
一方で任意売却による価格は、一般市場で成立する価格に近い水準での売却も可能といわれています。この違いは何によるものでしょうか。
競売による価格の決まり方
不動産競売では入札によって価格が決まります。基本的に期間入札で行われ、裁判所が指定した期間に買受希望者がそれぞれ希望落札価格にて入札を行い、最も高い金額で入札したものが落札者となります。
裁判所からは買受可能価額が提示されており、買受希望者は買受可能価額以上の価額で入札しなければいけません。この買受可能価額は一般市場で成立する価格の5割程度の水準となっており、入札者は限られた情報の中で、様々な競売特有のリスクを抱えた競売物件の入札価格を決めることとなります。
これらのリスクやなるべく安く落札したいという思惑が働くなどの結果、落札金額は一般市場価格よりも低くなってしまうのです。
任意売却による価格の決まり方
任意売却では、不動産の売却について債権者の承諾が必要ですが、価格の決まり方という点においては通常の不動産売買と同じです。買い希望者は、購入の意思を決定する前に売買の対象となる不動産について、しっかりと調べることができ、内覧も可能です。
ただし売主は住宅ローンの返済が出来なくなった者であり、資力が無いために瑕疵担保責任については特約により免責ということが一般的です。しかし、瑕疵担保責任は免責とはなるものの、事前に物件を直接調べることができるため、内覧のできない競売に比べてリスクは相当小さくなります。これにより任意売却の価格は一般市場での売買価格水準に近くなるのです。
競売と任意売却での価格の差
競売と任意売却との価格差は、リスクの差であるといえます。
リスクの差の一例として、競売では物件を内見して状況の確認をすることができず、所有者の使用状況や内装などの摩耗の状況などを明確に知ることができず、任意売却では、実際に目で見て、確認することができます。この差は大変大きなものです。
また、競売では、物件関係者の状況をしっかりと確認することができません。現在、競売物件に居住を続けているのであれば、退去日の交渉などは基本的に落札者が行う必要があります。一方、任意売却であれば所有者と購入前に交渉でき、契約に織り込むことも出来るので安心感が違います。
このような買い手側が負担するリスクが競売は大きく、これらを織り込んだ価格になり、内見や引き渡しまでもしっかりと対応する任意売却は一般水準に近い価格での売却も可能となるのです。