離婚に踏み切る場合、婚姻期間中に築かれた財産について、双方で分与することが法律で義務付けられています。建物としての家を分与する場合には売却によってお金に換えるという手段を取るのが主となりますが、それには概ねどの程度の期間を要するのでしょうか?
離婚時の財産分与
民法(761条1項)により、婚姻中に形成された財産に関して、離婚時には双方に受け取る権利があるものと定められています。双方平等に資産が分割・配分されるよう規定されているわけです。これに伴い、仮に一方が家事に専念し自身で収入を得ていなかったとしても、結婚期間中に夫婦で取得した財産について、その半分を受け取ることが可能となります。
夫婦関係が継続している間に購入したマイホームについても、財産分与の対象となります。しかし、家を住宅物件のまま2つに分けることはできません。そのため、マイホームを売り払い、そこから得た金額を分け合うという方法を取るのが常です。
マイホームについてローンなど返済すべき負債がない場合、通常の不動産売買取引がなされ、売上金は必要経費分を除いてそのまま離婚を予定する夫婦間で分与することとなります。一般的な不動産仲介による売買では、売却完了までにおよそ3~6ヶ月掛るのが一般的です。マイホームをお金に換えるには、それぐらいの日数を要するものと踏まえておくべきでしょう。
住宅ローン返済中のマイホームを売却する場合
金融機関から資金を借り受けて自宅を購入し、月々の分割払いで資金の返済を行う住宅ローン。それを利用しなおかつローンが残っている状態で家を売却する場合、通常の不動産売買取引が行えません。住宅購入資金の貸付先である債権者側への返済が優先されるため、一般とは異なる売却方式が取られます。それが任意売却です。
任意売却は通常、ローンの支払いを滞納し、これ以上は月ごとの分割返済が認められず、ローン残額全額が一括返済で請求される事態に陥った場合に取られる売却方法に当たります。
残りのローンの一括請求がなされる状態は「期限の利益喪失」に相当します。この場合、債権者側は裁判所に対し、ローン対象物である住宅を差し押さえ、これを競売に掛け売却するよう申し立てることが可能です。その権利を抵当権と言います。競売によって支払われた売却金は債権者に与えられ、それによってローン未納の穴埋めがなされるわけです。
競売は入札形式で行われ、概ね通常の不動産取引に比べて安い価格で売り渡されます。しかし任意売却では、通常の不動産取引の評価額に基づいて価格が決定されるため、競売より多額で取引されることとなります。ローン残額を減らすには、競売より任意売却の方が有利というわけです。
通常の不動産売買とは異なり、任意売却には事実上タイムリミットが置かれることとなります。競売の入札者募集と同時進行で取り組まれるため、競売落札日までに任意売却契約が完了しなければ、競売の落札者への売り渡しが決定してしまうわけです。
任意売却が可能となる期間は、住宅ローン発生から競売落札までの、約10ヶ月~1年4ヶ月です。任意売却の依頼から売買完了に至るまでの実施期間は早くても3~6ヶ月掛かるとされ、任意売却可能期間内に充分な実施期間を確保することが重要となります。
また、任意売却を行うには債権者の抵当権抹消が必須であり、そのため債権者側との交渉も欠かせません。そういったことから、離婚に伴って任意売却を行う際にはまず、これに対応可能な不動産会社に依頼することが不可欠な条件と言えます。
まとめ
以上、離婚に際してマイホームを売却する場合に要する期間について、通常のケースと任意売却のケースそれぞれについて見てまいりました。離婚によってローン返済中の自宅を手放す場合、ローンの残債が借金となるリスクが発生します。その負債額を軽減する手段として、任意売却が有効と言えます。
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