抵当権が設定された物件について競売の申立てが行われると、裁判所によって売却が行われます。
この売却代金は債権者などに法律に沿った分配が行われることになりますが、債権者が配当を申し出る手続きに類似したもので交付要求というものがあります。
配当要求と交付要求
配当要求とは、競売の申立てを行った人以外で債権をもつ債権者が、競売によって強制換価された物件の売却価格から、配当を受けるために申し出る制度のことを言います。競売の申立てを受けた裁判所は、競売の開始決定を行った後に売却対象となる不動産を差押えて、配当要求の期限を定めた上で公告をします。配当要求をする者はこの期限内に手続きを行う必要があります。
交付要求とは、国税などの滞納者の財産が競売などのように滞納者の財産が強制的に換価される手続きが行われた場合に換価した価値すなわち売却価格から滞納した税金の交付を請求することをいいます。
なお、差押えが国税、地方税を問わず他の公租公課の滞納によるもので、かつ国税徴収法で定められた財産についての場合には交付要求ではなく参加差押ということになります。
これらは似たような制度でありますが、交付要求は自らが徴収を実行するものではないことから差押え、換価、配当とは異なります。
交付要求の要件と手続き
交付要求を行うには要件があります。国税徴収法の定めにおいては、滞納国税があり、滞納者の財産について競売などの強制換価手続きが行われれば当該要件を満たすことになります。なお、国税の滞納については滞納という事実で足り、督促の有無、猶予期間中であるか否かなどが問われることはありません。
交付要求の手続きは、競売であれば裁判所に対して交付要求書を交付することで行います。この手続きを行った場合には、滞納者であり債務者と競売物件に係る債権者などに交付通知書を送付し交付要求を行った旨の連絡をすることになります。
交付要求の効力
交付要求を行うと競売による売却価格から他の一般の債権者から優先して国税などの滞納額について配当を受けることができます。なお、交付要求が複数行われている場合には先行した交付要求が優先することになります。
また、交付要求には時効を中断させる効力があり、競売の取消、取下げがあった場合には交付要求の効力は消滅することになります。
なお、交付要求を行うと競売にかかる他の一般の債権者の回収額に大きな影響を与えることになってしまうため、滞納者が所有する他の財産を換価することによって滞納された税金を徴収することができる場合には交付要求を行わない旨定められています。