債務者による住宅ローンの弁済が不可能と判断した債権者は、裁判所に担保物件の競売の申立てを行い、競売の実行という手段を取ることがあります。不動産競売の手続きにおいて申立てを行った債権者は、予納金をあらかじめ裁判所に納める必要があります。この予納金とはどのようなものなのでしょうか。
■ 予納金の性質と必要な金額
競売実行までの過程において手続き上様々な費用が発生することとなります。主だったものは、差押の嘱託登記手続きにかかる費用、各種書面の郵送代、現況調査報告書や評価書の作成費用、売却実施処分公告のための費用などです。これらの費用が予納金から賄われることとなり、不足が発生した場合には追加金を納める必要が生じます。 予納金は不動産競売における請求債権額で決まっています。裁判所によって細かな点が異なるようですが、東京地方裁判所を例としますと、請求債権額が2000万円未満の場合には60万円、2000万円以上5000万円未満の場合には100万円、5000万円以上1億円未満の場合には150万円、1億円を超える場合には200万円を納める必要があります。
■ 予納金は最終的には誰が負担しているか
上記のような決して安くはない金額ですが、競売申立てを行った債権者が予納金として競売手続きの開始に当たり負担することとなります。債権者は予納金の他にも印紙代や差押登記のための登録免許税などを負担していますので、競売の実行にも相当な費用が掛かることが分かります。この予納金を始めとする費用は、物件の売却代金から差し引かれ申立てを行った債権者に償還されます。したがって最終的には債務者が負担していることとなるのです。 ただし、競売によって落札者が現れなかった場合には、予納金の残金だけが申立てを行った債権者に返却されることとなります。
■競売による売却は債務者にとって不利
競売による売却は、一般市場で成立する相場よりも低い価格水準で売却金額が決まってしまい、売却価格は市場価格と6~7割程度と言われています。更に予納金やその他の費用も最終的には債務者が負担する訳ですから、債務返済に充てられる金額が更に少なくなることになります。競売が実行となると、債権者主体で話が進んでいきますので気づかないかもしれませんが、実は経費負担も最終的には債務者がしているのです。 競売であっても諸経費は結局債務者が負担するのであれば、少しでも残債を減らせる可能性の高い任意売却を検討してみてはいかがでしょうか。競売申立てをした債権者も回収できる金額は高いに越したことはないと考えていますから、前向きに相談に乗ってくれると思います。