住宅ローンの滞納による抵当権の実行、裁判による債務名義に基づく強制執行などで不動産が競売に掛けられることがあります。不動産を競売で売却する場合に、売却基準価額が設けられますがこの売却基準価額とはどのような意味を持つのでしょうか。
■競売による不動産の売却
競売とは買い希望者が自身の希望する購入金額を入札して、最も高い金額で入札を行った者が購入する権利を取得するという方式の売却形式のことをいいます。地方裁判所における不動産競売では、一般的に期間入札という方式を採用しており、1週間以上から1カ月以内で入札期間を定めて当該期間に買受希望者は入札を行います。
当該入札は入札書の郵送、提出という方法で行われ、他の買受希望者がいくらの金額で入札しているのかは分からないようになっています。したがってオークションなどのように希望者が一堂に会して、買受希望価格を掲げる方式とは異なります。
競売では買受希望者の購買意欲を煽ることで落札金額を高くする効果が期待できますが、その一方で入札妨害などによって適正な価格と大きく乖離した安い金額で売却価額が決まってしまう恐れもあります。このような事態を避けるため裁判所で行われる不動産競売では売却基準価額が設定されているのです。
■売却基準価額とは何か
不動産競売によって落札者から支払われた金銭は、債務の返済に充当されることになります。債権者は不動産の担保としての価値に着目している訳ですから、あまりに低廉な金額で売却されるのも困りものです。そこで売却基準価額を設定して売却の最低ラインとなる金額を定めているのです。売却基準価額よりも2割低い金額を買受可能価額といい、この金額を下回る金額では売却されないようになっています。
■売却基準価額の決定
競売における売却基準価額は、裁判所によって選任された評価人による評価額であることが一般的です。不動産の価格の目安には、公示価格、相続税路線価、固定資産税評価額などがありますが、売却基準価額の2割低い買受可能価額は上記のいずれの価格よりも低くなるのが通常です。
これは物件の確認を十分にすることが出来ないことや売主が非協力的であること、物件の明け渡しにトラブルが発生する可能性があることなどが十分に織り込まれた価格となっているためで、通常の不動産市場で売買される価格の半分以下に設定されることもあります。
競売は入札によって売却の金額が決定されるため、買受可能価額で売却されることが決まっている訳ではありませんが、競売による物件は上記のような理由から低廉な価格になりやすい傾向があります。