自宅を夫婦や親子、兄弟などで出し合い、共有するケースというのは特段珍しいものではありません。しかし、建物自体を持分に応じて分割することはできないため、債権債務の関係の中で複雑な問題となることもあります。
■ 連帯債務とはどのようなものか
連帯債務者とは、連帯保証人とは異なるもので、ひとつの債務について他の債務者と同様に連帯して債務を負うことを意味します。つまり、連帯保証人は主たる債務者が返済不能となって初めて返済の請求を受けることとなりますが、連帯債務者は他の債務者と連帯して債務を負っているため他の債務者の返済状況に関係なく債権者から返済の請求を受けることがあります。
■ 連帯債務者の持分のみが売却の対象となるか
住宅ローンにおいて例えば夫婦の連帯債務ですと、どちらから返済が行われていても債権者にとって問題はありません。しかし、何らかの理由で例えば妻がカード破産などで自己の持分を破産管財人が売却して整理を行うとなると話はややこしくなります。夫としては競売などによって赤の他人が共有者となることは避けたいと思うのが通常です。したがって競売で夫が落札をするか、他の落札者から買い取りをするか、競売前に適正価格で破産管財人から共有持分を買い取るかという方法を取ることが考えられます。しかし、実際には次の事情により、難しい話となります。
■ 連帯債務者の自己破産は債務全体に影響を与える。
住宅ローンにおいて連帯債務者は、夫婦の収入合算によって審査を経ているものが多いのが実情です。すなわち夫の収入だけでは審査が通らないために妻の収入も併せて返済能力の審査を受けたということです。このような場合、連帯債務者が自己破産すると、ローン保証会社から債権者である金融機関などに代位弁済がされる契約となっていることが多いです。この場合には抵当権は連帯債務者の両持分に設定されていますので結局建物全体が売却の対象となってしまいます。 資金に余裕があれば、破産管財人から任意売却の形で共有持分を購入し、債権者にはローンの残額を一括で返済すれば自宅を手放さなくても済みますが、そうでない場合は、競売などの強制売却へと話しが進んでいきます。 もし、自宅を手放さざるを得ないのであれば、残債を出来るだけ少なくするためにも任意売却によって一棟全体を売却するのも一つの方法です。債権者と破産管財人の承諾が必要となりますが、破産管財人も債権者も出来る限り高い金額での回収を望んでいますので交渉の余地は十分にあります。このような複雑な権利関係のなかでの任意売却では専門的な知識を要しますので任意売却に精通した不動産会社などにも相談すると交渉もスムーズにいく可能性が高くなります。