競売による売却では、安いのが当たり前と思う人がほとんどでしょう。なぜ「売却基準価額」が決まるのか、その理由や決定に至る考え方について紹介していきましょう。競売に対しての見落としがないかの参考になるでしょう。
■売却基準価額の決定
売却基準価額は裁判所の裁定により不動産の売却基準価額を定めることや、値段を変更したりして決定します。不動産鑑定士は評価価格(積算価格と収益価格を勘案して算出)のもとで価格の決定に至ります。「買い請け人」は、その「売却基準価額」から2/10の価格を差し引いて設定されますが、買い受け値段は、それ以上である必要があります。
■市場流通価格との違い
取引する不動産物件に対しては、購入者に対する瑕疵の保証(物件に損壊や以上に対して保証されるもの)や手続きに対しての便宜が行われます。つまり、買う側の権利の主張ができるわけです。競売物件の場合には、買う側の権利に対しては何の保証もないために、その分の価格は3割以上の評価の減額が行われています。基本的な「売却基準価額」が低いために総合的な最終価格は、市場の流通価格よりも4割、5割になると見ています。
◎競売価格の評価を下げている理由
①競売物件に対する抵抗感
売主の生活状況や、負債による追い込まれた状況などがあり、今なお生活の拠点である場合に交渉などに感情面での影響を受けかねないでしょう。
②所有者が非協力的
買い受けが決定したとしても、所有者と債務者の同意が必要なために、スムーズな売却とは言えず、何かしら問題がでてくるために困難が考えられる。
③リフォームなどの修繕が必要
売却に至るまでに生活は続いている為に、退去に同意したとしても、売主に修繕やリフォームの余裕はないので、建物の老朽化や損壊によるリフォームの必要性は購入者の負担となる。
④売却の支払いが1か月以内である
競売の支払いは、入札前には売却基準額の1/5以上の保証金が必要であり、落札後は全額を1か月以内の支払いとなります。
⑤買主は、明け渡しの処理を行うこと。
売却の許可が出たら、1週間以内の執行抗告期間(所有者の抵抗の意思)をえて、立ち退きについての占有者への通知を行ったり、仮に応じたとしても引っ越しの手続きなどは購入者による主導で行わなければ先に進めないことが多いでしょう。
■入札希望者を増やすための制度に移行
以前までの売却の基準は、裁判所の「最低売却価額よりも上の金額」による取引になっていましたが、市場の価格を上回ることもあって、競売の取引が不成立になる事が多かったのです。
「売却基準価額」に基づいて、20%を差し引いた価格以上での取引が採用されて、競売の希望者が増えることになりました。この価格を「買受可能価額」といって入札の目安となっています。
◎売却基準価格と他の評価額
・時価(実際の市場取引価格)
・国土交通省が出す公示価格
・国税庁が出す路線価
・都道府県が出す基準地価
・市町村が出す固定資産税評価額
これらの公示価格を参考にして「売却基準価格」との購入価格の参考にすべきでしょう。
尚、地方の取引価格は、時価の60%ととなり、都心部では、時価の30%ぐらいが減価率(割引価格)となり都心の方が高めの価格で取引されます。
競売の取引が低めに設定されている理由が理解できたと思います。売主の立場から考えた場合に、少しでも負債を減らしたり少しでも高く売却できることが望ましいでしょう。そのための解決策として「任意売却」での方法によりその可能性を増すことができます。債権者にしても裁判所の基準価格よりも高く売れる可能性があれば、「任意売却」での了解を取ることができます。
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