不動産競売は全国の地方裁判所で行われています。ひとつの機関が取り扱う物件数としては日本最大であることは間違いないでしょう。この裁判所で扱われる競売物件数はどのような推移をしているかを見ていきましょう。
不動産競売物件数
競売物件数ではありませんが、裁判所の司法統計によると過去10年の不動産等を目的とする担保等の実行としての競売等の事件総数、終結数、取り下げ数は下記のように推移しています。
総数
終結
取下げ
平成18年度
61,046
42,493
14,333
平成19年度
51,430
36,324
11,668
平成20年度
49,907
34,887
11,493
平成21年度
64,254
45,502
14,656
平成22年度
60,198
43,969
12,975
平成23年度
45,549
33,012
10,212
平成24年度
39,758
29,135
8,874
平成25年度
33,522
24,420
7,722
平成26年度
27,586
20,429
6,037
平成27年度
23,070
16,939
5,183
上記は担保権等の実行のため、土地や建物などに抵当権などを設定した不動産などが扱われた事件の数となります。これをみると、この10年で4割程度まで事件数が減少していることが分かります。
事件数と物件数は同じではありませんが、概ね近い数字になると考えられます。
競売物件の数が減少した理由
平成21年度に競売の事件数が過去10年の間で最大になったのは、平成20年9月に起こったリーマンショックが大きな要因になっていると考えられます。リーマンショックが引き起こした経済情勢の悪化は日本にも無関係ではなく、多くの失業者の発生や家計の収入減少を招きました。これにより住宅ローンを始め借入金の返済が困難になり多くの競売事件が起こりました。
しかし、平成21年12月に「中小企業金融円滑化法」が施行され状況に変化が現れます。この法律は中小企業から借入金の返済の猶予が減額の相談された場合、金融機関は可能な限りの対応を行うことを命じたものです。この法律の対象には住宅ローンも含まれており、住宅ローンの返済についても同様の対応が金融機関に求められ、この結果、競売が実行に至る事案が大幅に減少することとなりました。そして、この中小企業金融円滑化法は2013年3月に終了しましたが、金融機関は施行中のスタンスを踏襲したため競売事件数の減少傾向が継続していると考えられます。
任意競売の拡大も減少の理由
競売事件数の減少、すなわち競売物件数の減少には任意売却も大きな理由です。任意売却は、競売実行を回避する限られた手段の中のひとつです。従来は競売の実行への対応策を持つことができず、ただ売却を待つだけだった方もインターネットの普及などにより任意売却について知ることが出来るようになったこともあります。
借入金の返済猶予などは、問題の根本的な解決にならない場合があります。このようなとき問題の解決のために競売よりも任意売却を選択される方が増えてきているということだと考えられます。