債務整理

競売で落札した物件で動産の処分法

競売に参加し、目当ての物件を無事落札することが出来て建物の中を見たら、中には前住人(債務者・占有者)の動産(残置物)が残されていて困った。この様なケースは決して珍しい事ではありません。今回は競売落札物件に残された残置物の処分方法についてお伝えします。

動産はあくまで前所有者の物

落札した物件で残置物の所有権は買受人(落札者)ではなく、あくまでも前住人(占有者・債務者)にあります。その為、邪魔になっていても買受人が勝手に処分することは法的に許されていません。

もしも、買受人が前所有者の同意なく勝手に捨てたり売ったりした場合は、損害賠償を請求される可能性があります。それだけではなく最悪の場合、窃盗罪や器物損壊罪に問われる可能性すらあります。決して安易に手を付けてはいけません。では、どの様に対処すればよいのか、順番に解説します。

残置物の処分は、前住人と交渉して引き取ってもらうか、あるいは法的手段を取って処分する事になります。その際、残置物撤去費用・運送業者の費用・執行当日の処分費用・保管する場合は倉庫の費用等が生じます。

交渉によって撤去する場合

前住人と連絡を取り、残置物の処分方法を書面で取り交わします。その際書面には、動産(残置物)の引き取りの期限と、期限までに引き取らない場合は買受人が処分する旨を忘れず記載しましょう。

残置物の処分に掛かる費用は前住人に対して請求可能ですが、実際には、前住人が費用を捻出することは困難な場合が多く、費用を免除するか、または所有権放棄をしてもらう為に承諾料を買受人が前住人に支払うケースすらあります。どちらにしても口約束ではなく、きちんと書面に記載することが重要になります。

どうしても残置物を処分してもらえない場合

前住人がどうしても残置物の処分に同意しない場合は、法的処置に頼ることになります。
具体的な流れを説明します。

引渡命令の申し立て

発令

「不動産の引渡又は明渡の強制執行」の申し立て

強制執行

保管

動産の公売、又は処分という事になります。掛かる費用は全て”買受人”の負担になります。

〇不動産の引き渡し又は明渡
裁判所の執行官が、前住人(占有者・債務者)の占有を解くことを引渡し又は明渡と呼びます。引渡しは、占有を移転する事を指す言葉です。明渡は前住人を立ち退かせる。又は残置物を取り払って占有を移転する事を指す言葉です。

裁判所の執行官は、買受人(落札者)からの申し立てを受けて、期限を決めて明渡の催告をすることができます。また、執行官は強制執行においては、動産を取り除いて、債務者又はその代理人、又は同居の親族、または使用にその他の従業者に引き渡さなければならないとされています。

物件を債務者の家族など債務者以外の者が占有している場合は、債務者に対する債務名義で執行可能です。

〇目的外動産の処理
残置物は明渡の目的物には該当しません。これらは目的外動産と呼ばれます。残置物(目的外動産)を引渡す事が出来ない場合は、執行官はこれを売却することが許されています。強制執行より一週間未満の日を、当該動産(残置物)の売却の実地日とすることができます。

〇強制執行の実務
強制執行は執行官が”国の代理人”として執り行います。まず、占有者に対し、いつまでに立ち退くよう公示書を提示します。仮に執行当日に前住人が不在の場合でも、執行官には、鍵屋さんを呼んで鍵を解錠して物件に立ち入ることが法的に許されています。

強制執行の日は、催告から一ヶ月後です。強制執行の際には、全ての収納類が開けられ、売却対象となる財産を確認します。動産目録を作成し、保管するものと排気するものに分けて梱包、搬出を行います。その後、目的外動産は競売手続きによって売却されます。

まとめ

今回は、競売で落札した物件に残された動産(残置物)の処分方法についてお伝えしました。所有権はあくまで前住人にあるという事を忘れずに、法律に基づいてしっかりと対処しましょう。

競売に関する事や不動産の事なら全ておまかせ、ご相談も「アブローズ」までご一報を下さい。

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