不動産競売と一括りにいいますが、実は競売には種類があります。競売は裁判所に申立てを行って開始される「事件」なのですが、この事件には(ケ)事件と(ヌ)事件があります。
今回は強制競売とは何かについてみてみましょう。
(ケ)事件と(ヌ)事件
不動産競売の事件番号は、「平成〇〇年(ケ)第〇〇号」、「平成〇〇年(ヌ)第〇〇号」といったような表記がされます。(ケ)と(ヌ)に違いがあるのですが、これらは何を表しているのでしょうか。
不動産競売には強制競売と担保不動産競売の2種類があります。
強制競売事件を「(ヌ)」、担保不動産競売を「(ケ)」で表します。住宅ローンによる借入を行った場合、金融機関によりマイホームに抵当権を設定します。この抵当権の実行による不動産の競売が担保不動産競売です。一方、抵当権などの設定がなく、裁判に判決や公正証書などの債務者名義に基づいて債権者が申立てを行うことで行われる競売が強制競売です。
強制競売はどのような競売か
強制競売は抵当権などの担保権の実行とは異なる競売事件です。担保不動産競売は、担保設定された不動産を競売の対象としますが、強制競売は不動産に限らず、船舶、航空機、自動車、建設機械なども対象となります。
強制競売で売却される不動産と担保不動産競売の不動産には不動産であるという点では特段に違いはありません。競売になる過程に違いがあるだけです。
しかし、この二つの競売には特筆すべき大きな違いがあります。それは取下げ率の違いです。
不動産等を目的とする担保権の実行としての競売の過去3年の事件総数と取下げ件数と取下げ率は下記のとおりです。
平成25年度 総数33,522件 取下げ件数7,722件 取下げ率23.0%
平成26年度 総数27,586件 取下げ件数6,037件 取下げ率21.9%
平成27年度 総数23,070件 取下げ件数5,183件 取下げ率22.5%
これに対し不動産等に対する強制競売では下記のとおりとなります。
平成25年度 総数 4,238件 取下げ件数2,228件 取下げ率52.6%
平成26年度 総数 4,221件 取下げ件数2,235件 取下げ率52.9%
平成27年度 総数 4,345件 取下げ件数2,266件 取下げ率52.2%
以上のように不動産等に対する強制競売では半数以上が取下げとなっていることが分かります。
取下げ率が高い理由
債務者名義による強制競売では取下げが多くなりますが、実際に不動産を差し押さえることで債務者等にプレッシャーを与えることで債務が弁済された結果として取下げをしたり、そもそも配当が受けられないために債権者が諦めて取下げを行ったりなど様々な理由があるとは思います。
これに対し抵当権等の担保権の実行は取下げ率が低く、一度、申し立てが行われると競売の回避はなかなか難しいということが分かります。
一番大切なのは、抵当権の実行というような事態とならないように返済計画を立てること、返済が困難になってきたら早い段階で金融機関等債権者に相談することが大切です。