裁判所における不動産競売では、価格や価額と付く言葉が複数出てきます。スーパーマーケットなどでは、価格とは値段のことです。もし、店の商品が価格は100円ですが、値段は50円ですという表記がされていたら、きっと混乱してしまうことでしょう。
では、不動産競売において複数ある価格や価額は一体何を意味しているのでしょうか。
価格と価額
不動産競売では、売却基準価額、買受可能価額、そして入札価格、落札価格といった言葉が頻繁に使用されます。ところで価格と価額の違いについてご存知でしょうか。両者は似たような言葉ですが、意味合いは全く異なるのです。
価格とは、英語でいうところのプライスであり、その物の具体的な値段のことを意味します。これに対して価額とは、英語でいうところのバリューであり、その物の価値に付けた金額のことを意味します。
以上のことから、売却基準価額や買受可能価額は客観的に付けられた評価に基づく金額であり、入札価格や落札価格は買受希望者が個別具体に値付けをした価格ということになります。
したがって、入札価格や落札価格は売却基準価額とどれだけ乖離しても、買受希望者がそれで買受けたいと思った値段なので問題は無いのです。
競売における価額
価額はその物の価値に基づいて客観的に付けられた評価額のことだということですが、売却基準価額はどのように決められているのでしょうか。不動産競売の重要な資料に3点セットと呼ばれるものがあります。これは「現況調査報告書」「物件明細書」「評価書」のことです。このうちの評価書は裁判所から選任された評価人が競売不動産について客観的に評価を行っています。この評価書では、競売特有の市場性を反映した評価額が記載されています。裁判所は、この評価書の評価額に基づき売却基準価額を決定しますが、これは、競売市場という特殊な要因を加味した評価額であり、値段とは異なります。客観的な評価額ではありますが、買受人が買受けたいと思う金額とは異なるものです。そして、この売却基準価額に基づいて算出されるのが買受可能価額であり、評価額に基づくものなので価額で表記されます。
競売における価格
このようにして売却基準価額、買受可能価額の提示を受けて、買受希望者は自分で競売物件の値踏みをし、自身で競売物件の値段を付けて入札を行います。こうして最高値で入札を行ったものの入札価格が落札価格となるのです。
こうして買受希望者ごとに値段が付けられていく不動産競売では、入札者の思惑によって価格が大きく動くことが起こります。一般的にはなるべく安く買いたいと考えるために、競売による売却価格は一般の取引市場と比較して価格が低廉になるのです。