旅行中の交通事故や飛行機事故などによって、両親が同時に死亡してしまうということも絶対に起こらないという訳ではありません。もし、両親が同時死亡してしまった場合に、両親の遺産の相続はどのようになるのでしょうか。
■同時死亡規定
相続は同時死亡かそうでないかで相続の順番や分割割合に大きな影響を与えます。では、同時死亡というのはどのようなことをいうのでしょうか。
民法には同時死亡の推定という条項があります。これは32条の2の規定があり、「数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。」となっています。
したがって両親の旅行中に飛行機事故や自動車事故などが起きて、実際に同時に亡くなった訳ではなかったとしてもそれが明らかにならない場合には同時に死亡したものとみなすということを言っています。例えば父親は事故現場で即死で、母親は事故現場から病院に搬送されている途中であったとすれば、同じ事故を原因とする死亡であっても同時死亡ではなくなります。
■両親の同時死亡での相続
相続の考え方として、同時死亡と推定される場合には、死亡したもの同士で相続は行われないということがあります。両親が同時死亡した場合も同様であり、配偶者は婚姻相手の財産を相続しないこととなります。もし、1分でも母親の死亡が遅いことが明らかになっていれば、母親は配偶者である父親の財産を相続した後に死亡したことになります。
両親が同時死亡であっても、時間差で死亡したとしても相続をする意思を持つ子供がいれば相続が問題になることはほとんどないでしょう。なぜならば、同時死亡であってもそうでなくても子供が両親の全財産を相続することに変わりが無いからです。
■子供が相続放棄をした場合
子供が相続放棄をした場合や子供がいない場合には、同時死亡かどうかは相続人、遺産分割に大きな影響を与えることになります。両親が同時死亡の場合にはお互いに相続はしないために、子供が相続放棄をした場合にはそれぞれの財産は配偶者にはいかず、それぞれの両親又は兄弟姉妹に相続されることになります。
しかし例えば父親の死亡後に母親が死亡したことが明らかになると父親の財産3分の2から4分の3が配偶者である母親に相続され、母親が相続した財産は母親側の両親又は兄弟姉妹に相続されることになります。
このように子供が相続しないことで同時死亡かそうでないかは、遺産の相続の流れに大きな影響を与えることになるのです。