金融機関などで住宅ローンの融資を受けてマイホームを取得すると、通常、債務者の所有する土地や建物の登記簿に抵当権という権利が設定されることとなります。この抵当権とはどのようなもので、何を意味するものなのでしょうか。
■ 抵当権
抵当権とは、住宅ローンなどによって金銭の借り入れを行った際に、貸主がお金を貸すことに対して設定する担保権をいいます。住宅ローンでは債権者が融資をする代わりに土地や建物に抵当権を設定して、お金の返済が出来なくなったときには土地や建物を債権者が処分をするなどして債権を回収することとなります。 不動産に抵当権を設定した場合、返済が出来なくなった時、不動産を処分する権利を持つ者を抵当権者、処分される不動産の所有権を持つ者を抵当権設定者と言います。
■ 抵当権の意味すること
抵当権の特徴は、目的物の引き渡しを必要としないため抵当権が自宅に設定されても抵当権設定者は自宅に住み続けることができることです。また、抵当権が設定されていても、賃貸することが可能です。法律上では売却することにも問題はありません。しかし、実際には抵当権の付いたままの物件が売買されることはほとんどありません。何故なら抵当権は人ではなく設定した物に付くため、抵当権がいつ実行されてもおかしくない物件を購入しようとする人はほとんど居ないからです。 なお、抵当権は口頭でも成立しますが、そのままですと売買によって新しく取得した人には抵当権を主張することができません。抵当権設定の登記を行っておくことで売買による新所有者にも抵当権を主張できるようになります。
■抵当権の付着した不動産の売却方法
抵当権が付着した不動産にはリスクがあると判断されるため、抵当権を抹消してから売却を行うのが望ましいといえます。抵当権の登記を抹消するためには、当然に抵当権設定の前提となっている債権債務が消滅していることが必要です。住宅ローンでいえば返済が完了していることです。 そうなると住宅ローンの返済中の物件は一括返済しなければ売却することができないということになってしまいます。そこで売買成立時に抵当権の抹消を行うことを条件にするという方法を取ります。これによって抵当権の設定が無いものとして売買交渉を行うことができるようになるのです。 住宅ローンが残っているマイホームを売却する方法のひとつである任意売却は、このように抵当権抹消を前提として一般市場での売却を行います。このため任意売却の実施に当たっては、まず抵当権者の承諾が必要となるのです。