競売による落札価格は、通常の市場価格よりも相当に安い価格となると言われています。しかし、競売の3点セットの中には評価書が入っており、ここで評価された金額を基に売却基準価額が決められています。この評価書では一体何を評価しているのでしょうか。
3点セットにおける評価書
裁判所では、競売物件について一般的に3点セットと呼ばれる「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」を提供しています。これらは競売不動産の情報を得るための有用な資料であり、評価書は裁判所によって選任された不動産鑑定士などの評価人によって作成され、競売不動産の価格に関する情報がまとめられたものになっています。
競売不動産の価格を形成する要因のほか、増価させる要因、減価させる要因についてもまとめられています。
競売特有の減価
一般の取引市場で売買される不動産であっても、増価させる要因と減価させる要因とについては分析する必要があります。しかし、競売市場における不動産の売却は、このような増価、減価とは違う要因で減価が発生すると考えられています。それが一般の取引市場との比較による競売市場減価です。
3点セットの評価書では、評価の条件として「本件評価は、民事執行法により売却されることを前提とした適正価格を求めているものである。」となっています。したがって査定されている価格は競売市場を前提とした価格であり、一般市場で成立する価格とは異なることを明記しています。
さらに、競売市場には「一般の不動産取引と比較して競売不動産特有の各種の制約(売主の協力が得られないことが常識であること、買受希望者は内覧制度によるほかは物件内部の確認が直接できないこと、引渡しを受けるために法定の手続きをとらなければならない場合があること、瑕疵担保責任がないこと等)の特殊性」があると記載しています。
また、市場以外でも滞納管理費などがあれば滞納相当額を減価し、買受人が引き受けることとなる敷金や預り金などがあれば、これらの相当額も減価することとなります。
任意売却による市場
競売による評価額の査定では、その特殊な市場性を反映させるための減価や滞納などによって買受人が負担することとなる金額相当の減価が行われます。これらの減価によって競売価格は一般市場での売買と比較して低廉となる訳です。もし、競売ではなく任意売却を選択すれば、競売市場が前提とはならないため競落価格のように大きく価格が下がることはありません。
むしろ一般市場における取引に近い形での売買となるために、任意売却でも一般の不動産取引で成立する価格と同じような水準で売却することも可能となるのです。もし、競売を回避して、出来る限り高く売却したいということでしたら、任意売却を検討されることをお勧めします。