住宅ローンの返済が出来なくなった債務者が任意売却を行おうと思っても、債権者の同意が無ければ行うことはできません。もし、債権者が競売実行の申立てを行っているとしたら、何らかの方法で競売を回避できなければ競売での売却が決まってしまいます。
しかし、多くのケースで債権者は任意売却に同意をします。これは競売よりも任意売却のほうが債権者にとってもメリットが大きいと考えているからです。
債権者にとってのメリット
競売よりも任意売却に同意するメリットとしては、やはり何といっても競売による売却よりも回収金額が大きくなる可能性が高いことに他なりません。債権者は債権回収にシビアであり、出来る限り回収金額を高くしたいと思っています。
しかし、担保不動産を1件1件自らが売却していく訳にもいかず、効率性などを勘案した結果、回収金額が低くなっても競売で売却することを選択しているに過ぎません。また、債権者は債務者が任意売却によって低廉な価格で売却をしてしまおうとした場合に、当該取引を拒否することが可能です。このように任意売却の取引にも債権者の立場で強い影響力を持つことができることもメリットです。
したがって債務者が自ら任意売却で一般の取引市場で売却したいとの申し出があれば同意しない合理的な理由があまりないのです。
競売と同時並行させることのメリット
債権者が任意売却に同意をしても、債務者の動きが悪ければ思うように売却が進まないということも起こりえます。債権者としても債権回収にだらだらと時間は掛けていられないというのが本音です。そこで任意売却に同意は与えても競売と同時並行で進めるという債権者も多く存在します。
競売と同時並行することのメリットは、競売のスケジュールがペースメーカーとなり任意売却に適度な緊張感を与えることと、競売の売却基準価格を知ることができることにあります。
何故、競売の同時並行が債務者に緊張感を与えるかというと、そもそもが競売を回避したいと考えているのが債務者であることから、任意売却が前に進まなければ競売になってしまうということは、任意売却に向けた推進力になります。また、売却基準価格は任意売却による取引価格についての一つの指標になります。
債務者にもメリットがあります。
金銭的なこと以外にも債務者にメリットがあるのが任意売却です。任意売却であれば、外見的には通常の売買行為と何ら変わりませんので、ご近所の方に住宅ローンの返済が出来なくて売却するとは思われません。
また、確実ではありませんが、引越しの時期は購入希望者と引越し代金は債権者と交渉することによって希望の日程で退去が出来たり、引越し代金を捻出して貰えることがあります。
このように任意売却は債権者、債務者双方にメリットのある売却方法なのです。