裁判所で行われる不動産の競売は、期間入札という方式で行われるのが通常です。この期間入札とは、競売に掛けられている不動産を買受けたいと思っている人が一定期間に入札し、その中で最も高額な価格を入札した人が落札者となるというシステムです。
この期間入札には売却基準価格が設定されていますが、この売却基準価格とはどのような役割を果たすものなのでしょうか。
一定の価格以上の入札が必要
不動産競売が完全な市場で行われるのであれば、おそらく適正な金額で売買されることとなるでしょう。しかし、実際のところ競売市場は限られた狭い市場であり、情報にも偏りがあるため完全な市場とは異なります。このような中で、もし、談合のようなものが起こってしまうと、競売に掛かった不動産は一般の市場からかけ離れた価格で売却されてしまうということも起こってしまいますし、かつて、そのようなこともありました。
そこで、不動産競売では最低売却価額制度を作り、評価人の評価に基づいて最低売却価額を裁判所が定めるようにしました。期間入札では、この最低売却価額を上回る金額で入札をしなければ入札が無効となるという仕組みです。
さらに裁判所は期間入札による売却率を上げるために、最低売却価額制度を見直して、売却基準価額制度に変更をしました。この売却基準価額制度では、裁判所が評価人の評価に基づき売却基準価額を定めるのですが、入札する金額は売却基準価額の2割相当額を差し引いた価額以上であれば有効とする制度です。
売却基準価額とは、買受け可能価額を算出するために必要な価額ということになり、この価額があるので競売では一定の価格以上でなければ売却されないことになります。
売却基準価額が無いとどうなるか
もし、売却基準価額の設定が無いために、談合などによって著しく低廉な価額で落札されてしまうと、競売不動産の所有者は自分の財産が不当に安く売却されてしまい、担保権設定者は自己の債権の回収がほとんどできなくなってしまうこととなり不都合が大きく、落札者だけが暴利を貪ることになってしまいます。
売却基準価額の役割
そこで不動産の競売では、売却基準価額を、裁判所から選任を受けた評価人が個々の競売不動産を評価して求めることになります。評価人は一般の売買市場における不動産価格を求めた上で、競売特有の事情や市場性などを十分に勘案した減価を行って、競売市場における売却基準価額となる価格を査定します。
このようにして決定される売却基準価額とは、競売市場における不動産価格の下限を保証するような役割を持つことになります。