住宅ローンの返済が出来なくなったりした物件や、裁判による債務名義に基づき差し押さえられた物件などが競売によって売却されることになるのですが、競売物件はどのような流れで所有権が移転するのでしょうか。
所有権とは何か
所有権とは物に対して全面的な支配を認めるもので、具体的には自由に使用収益し処分する権利のことを言います。
競売物件の所有権が新たな買受人に移転するまでは債務者の所有物ではありますが、抵当権や差押えによって所有者は物の価値を維持する義務を負うことになり、所有者だからといって競売物件の価値を下げるような破壊行為などが禁じられることになります。
競売物件の所有権移転
競売物件を買受人が取得する時期というのは実は民事執行法の第79条で定められており、「買受人は、代金を納付した時に不動産を取得する。」となっています。
したがって代金を納付した時点で競売物件の所有権は債務者から買受人に移転することになります。
競売では期間入札が行われ、開札期日に、最も高い金額で入札を行った者(最高価買受申出人)が競売物件を買い受ける権利を取得します。
この時点では買い受ける権利を取得したに過ぎず代金を納付することはできません。
裁判所は最高価買受申出人について正しく入札の手続きが行われたかなどについての審査を行い、問題が無ければ開札から1週間以内に売却許可の決定を下します。
更に1週間経過した後に執行抗告が無ければ売却許可の決定が確定し、代金の納付についての通知が郵便で送付されます。
代金の納付には期限が付されており、通知を手にした買受人は入札した金額から入札の際に差し入れた保証金を引いた残額を期限内に納付して初めて所有権が債務者から買受人に移転することになるのです。
所有権移転の登記
代金を納付した時点で債務者から買受人に競売物件の所有権は移転することになるのですが、この時点では第三者に対抗することはできません。
そこで所有権の移転登記が必要になります。
競売ではこの所有権の移転登記は、裁判所が法務局に所有権移転登記を嘱託することで行われます。
したがって買受人自身が所有権移転登記の申請を行う必要は無いのですが、登記の嘱託の手続きのために必要な書類を揃える必要がありますので、事前に確認をして準備を整えておく必要があります。
また、買受人は入札代金のほか所有権移転登記に掛かる登録免許税などを負担する必要があります。
こうして所有権移転登記が完了すると、買受人は代金納付の時期に遡って第三者に対する対抗要件を具備していたことになります。