競売物件は第三者に落札されましたが、ある一定の条件を満たせば明け渡しを猶予してもらえるという制度が存在します。この制度についてどのような意味を有しているのでしょうか。今回は、猶予制度についてお話します。
制度導入について
2004年4月に制定した「建物明渡猶予制度」ですが、そもそもは民法の改正によって誕生した制度です。今までの制度は明け渡しに関する猶予はなく、落札したら速やかに物件を立ち退いた後、第三者に明け渡すのが一般的でした。しかし、即時退居はあまりにもハードルが高すぎたため、法律を整備することになりました。
短期賃貸借制度はなぜ廃止されたのか?
土地5年、建物3年とそれぞれの短期間における賃借権についてですが、その期間が満たされるまでの間は抵当権者に対抗できる唯一の制度で、賃借権のほか敷金に対する返済をする義務までも引き継がれることが一般的でした。
抵当権者からすれば不公平な制度でしたが、2004年にこの制度は姿を消すことになり、代替えとして競売物件を明け渡す際に、猶予を与える意味で制定されたのが、「建物明渡猶予制度」です。しかし、それ以前に締結された短期間における賃貸借に限るという条件で「短期賃貸借制度」は残されています。
猶予中はどうなるの?
建物明渡猶予制度は、物件を競り落とした人が裁判所に物件の落札金額の納付が済んだ日から約半年間、明渡の猶予が与えられる制度です。つまり、この半年間は建物の明け渡しを拒むことができる制度なのです。ただし、その期間を経過した場合は拒否ができなくなるので制度を活用する際には気を付けておくべき点です。
また、賃借権の登記や抵当権者全員が合意した場合、賃借人は物件を明け渡すことなく継続して住むことができる権利が保証されています。これが、抵当権者の合意により賃借権に対抗力を与える制度と呼ばれています。
次は、賃貸借物件(マンションやアパートの一室)の場合についてはどうなのか紹介します。
賃貸借物件の場合は?
マンションやアパートなどの物件ですが、退出までの半年間の猶予が与えられたからといって、毎月払う家賃はどうなのでしょうか。当然ながら、退出日まで入居することを意味していますので、家賃についてはその日までの間に大家さんに継続して支払うということから、入居契約はまだ継続しているのです。
敷金についてですが、退出した時に返還されるのが一般的です。しかし、落札した人に関しては敷金の引継ぎは適用されません。貸主の元へ返済されることになるからです。ただし、引っ越しの費用については請求できる範囲ではなく、借主が全額負担することになります。
まとめ
以上、競売の明け渡しに関する猶予制度について説明しました。いきなりの立ち退きに対して、引っ越しの費用などといった面で、その費用を持ち合わせてなくても立ち退きをしなければならないという点において、この制度のおかげで半年間待たせてもらう代わりに、引っ越しなどの資金を工面できるようになりました。
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