競売によって物件を落札したとしても、前の持ち主がそのまま居続けている場合もあり、このような場合の対処方法として、「引き渡し命令」というものがあります。競売の落札後の占拠者に対する引き渡し命令について紹介しましょう。
競売の落札後の流れ
競売で落札が決まると裁判所の売却の許可が出て、所有者となる「買受人」になります。入札に参加する為の保証金を、差し引いた残金の支払いが終わる事で、自分のものとなるのです。
裁判所が法務局に対して登記嘱託を行うと、自分の登記の権利書が発行される仕組みとなっているので、一般的にはここで完了となります。
ところが中には、転居費用もない生活に困った状態の前の所有者が居座りを続けている場合があります。このような不法占拠者に対しては、法の力を借りる事で強制立ち退きを実行する事が可能なのです。
不動産の引き渡しに対処する
債権などが滞った人たちに対処する方法として、不動産の「引き渡し命令」を申請する事が出来ます。占有者が居る事が分かった時点で裁判所に申し立てする事で、物件のスムーズな引き渡しが行えるのです。
ところがそれでもなお、占有者が購入物件から立ち去ろうとしない場合も考えられます。このような場合には、「強制執行」の手続きを行うしかないのです。これは、話し合いでは解決できない時の切り札とも言えます。
強制執行の手続きの流れ
引き渡しをスムーズに行うには、不動産の「引き渡し命令」を申請すると同時に、強制執行の手続きを行った方が良いでしょう。これは、意外と手続きに時間がかかるからです。強制執行の手続きには、「催告」と「断行」の2つの段階を踏まえて行います。詳しい説明は以下のようになります。
1.明渡しの「催告」について
裁判所の執行官と引っ越し業者が同行して、立ち退きに関する調査をするため占有物件に出向きます。これは前の住人など(占拠者)に対して、強制的に立ち退きを行う為の予告をする意味があります。
住宅の中に入ったのちに、強制執行の説明をし、強制執行日を記載した貼紙を部屋の中に貼っていきます。この貼紙には効力があり、はがす事自体に罰金が科せられます。
他の目的としては、資産価値のありそうな「動産」(現金・商品・家財など)があるかを確認する為と、引っ越し業者においては占有物の持ち運び費用を見積り、トラックや人件費がどれくらい必要かを確認する為に同行します。
2.強制執行の「断行」について
予め通知された決行の日までに、話し合いによる立ち退きで解決できなければ、その日に、強制執行を断行する事になります。執行業者さんは、トラックを乗り入れて荷物の運び出しを行います。その際の荷物は、貸し倉庫に保管される事になっています。
万一の場合に備えて、鍵の専門業者も立ち合います。これは、立ち入りを拒否して中に入れない場合や、新しく鍵を取り換えた方が安心という観点からです。
※住人以外にも、反社会勢力の関係者のような暴力的な占拠者に対する用心の為に、警察官を同行させる事も出来ます。また。強制執行から立ち退きの引き渡しまでは、およそ2週間かかるようです。
引っ越し費用や倉庫代の管理費用
引っ越し費用や倉庫代の管理費用は、落札者が代納して債務者に対して請求する事になっていますが、お分かりの通り、前の所有者に余分なお金は期待できないものです。請求は可能でも、実際には自己負担の可能性が高い事に注意しましょう。
執行官によって、前の住人の荷物は指定の倉庫によって保管されますが、約1カ月の間に引き取りがなかった場合には売却や廃棄処分となります。
まとめ
競売の落札後の占有者に対する不動産の引き渡しを、話し合いで解決できる事がベストなのですが、競売になるぐらいなので前の所有者に期待する事は難しいと言えます。長引いてこじれるよりも、引き渡し命令から強制執行まで立ち退きを完了させる事を第一に考えましょう。
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