残念ながら相続を巡って親族間で紛争になることがあり、最後は裁判で争われることもあるという話を聞いたことがあるかと思います。しかし、意外なことに遺産分割についてはそもそも裁判が出来ないということをご存知でしょうか。
遺産分割で争いが生じたとき
遺産分割で争いが起こった場合には裁判が起こせないとなると、どのようにして争いを治めるのでしょうか。
まず、複数の相続人が存在する場合には相続人が集まり遺産分割協議といって当事者で相続分についての協議を行います。この協議で相続人全員の同意が得られれば争いになることはありません。
しかし、相続人のうち一人でも合意しない者がいることで遺産分割協議が整わない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停を行うことになります。この遺産分割調停とは第三者の有識者に間に入ってもらって遺産分割について協議を続けることになります。この調停での相続人全員の合意が形成されない場合に、遺産分割審判に進むことになります。遺産分割審判では争点について整理を行い、必要があれば調査を行った後、裁判官が遺産分割について審判を下すことになります。この審判によって同意しない相続人がいたとしても争いは終結となります。
それでも不服がある場合
審判の内容に不服がある場合には、即時抗告という手段があります。即時抗告による不服申立手続きは控訴のようなイメージのもので相続人は高等裁判所にて主張や立証を行うことになります。即時抗告審で和解が成立しない場合には、高等裁判所が抗告審による決定を下すことになります。
この抗告審にも不服がある場合には、許可抗告又は特別抗告という手段があります。許可抗告は高等裁判所に対して不服申立てを行い、高等裁判所が抗告を認めた場合に最高裁判所へ争いが持ち込まれることになります。特別抗告は、当事者が直接最高裁判所に不服申立てを行うことをいいます。
しかし、実際には即時抗告審の内容に法令違反や憲法違反などの重大な問題がない限り、許可抗告も特別抗告も認められる可能性は殆どありません。したがって通常では即時抗告審が最終決定となります。
相続に絡んだ訴訟
以上のように遺産分割に関しては判決ではなく、審判となるため裁判が行われるということはありません。では、相続に関する裁判は行われないのかというとそんなことはありません。
遺言書の有効性や、遺産や相続人の範囲について争いがある場合には裁判が行われます。すなわち遺産分割の手続き上の争いではなく、そもそも遺産分割の前提についての争いであれば裁判になるということです。