相続が発生した結果、納めるべき相続税があればそれは国税となりますので、税務署の管轄となります。しかし、相続は常にスムーズに進む訳ではありません。相続による遺産の分割や相続権の取扱いなどは民法によって定められていますが、それでも争いや権利の実行などで裁判所との関りが出てきます。
具体的にはどのような状況で裁判所が関与するのでしょうか。
相続の問題は家庭裁判所
裁判所にも高等裁判所や地方裁判所などの種類がありますが、相続問題を扱うのは基本的に家庭裁判所になります。家庭裁判所は家事事件と少年事件を専門に扱う裁判所で、相続に関するものは家事事件となり、手続きの受付、調停や審判など様々なことを行います。
家庭裁判所での手続き
相続人が被相続人の権利や義務、財産や債務を相続しないための手続きに相続放棄という方法があります。また、被相続人の財産の範囲内で債務を相続するための手続きには限定承認という方法があります。これらの申述は家庭裁判所に対して行って初めて効力を持つことになります。
このほか相続放棄や限定承認を行うための期間伸長や遺留分放棄の手続きや相続人が存在しない場合に相続財産管理人の選任を行ったり、特別縁故者といって相続人ではないものの被相続人との間に特別な縁故関係にあった人に遺産を分与するための手続きも行ったりしています。
家庭裁判所での調停
家庭裁判所では、遺産分割調停、寄与分を定める処分調停、遺留分減殺による物件返還請求調停、遺産に関する紛争調整調停などを行います。調停は裁判とは異なり、判決ではなく話し合いをもって紛争などの解決を図ることを目的としています。相続発生後に遺産分割などで話し合いを進めてきた結果、まとまらないため調停に進んだにも関わらず、裁判所で話し合いを行うことに意味があるのかと思われる方もいらっしゃることでしょう。
しかし、調停では調停委員という第三者が話し合いの間に入ることになりますので、当事者だけではまとまらなかったことも上手くまとまるケースが多くあります。また、調停で決まったことは書面に残り、守らなければ強制執行などの手続きを取ることも可能となります。
家庭裁判所での審判
調停でも当事者が合意できない場合には、審判に進みます。審判は家事審判官が調査して、それぞれの相続人の事情などにも配慮しつつ相続による遺産分割を強制的に行います。この審判について異議がなければ、判決と同様の効果を持つことになりますが、異議があると地方裁判所などで訴訟事件として裁判で争われることとなります。
これ以外にも相続では家庭裁判所は関与しているところが多いので、相続で何か問題が発生した場合には「家事相談」という窓口に相談を持ち掛けてみられることをお勧めします。