住宅ローンの返済を滞納していると、やがて債権者は裁判所に抵当権に基づく競売の申立てを行い、債務者が所有しているマイホームは競売にて強制的に売却される事となります。競売は無料で行われる訳ではなく、費用を負担しなければいけません。
■競売の費用
競売は地方裁判所で行われますが、無料という訳ではなく費用が掛かります。この費用は競売の申立て時に予納金として支払う必要がありますが、住宅ローンの返済ができない債務者は費用負担をすることは現実的には難しいケースが殆どです。
出来る限り長くマイホームに住んでいたい債務者であれば尚更負担させるのは難しいことでしょう。債権者としても出来る限り早く債権を回収したい訳ですから、実際は債権者が競売実行の費用となる予納金を用意することが多くなります。そうなると債務者は何の費用も負担をしないまま競売が実行される事となりますが、最終的には債務者が原則として競売に係る費用を負担する事となります。
■競売の費用負担
競売を行うための費用に該当する予納金は、執行官が作成する現況調査報告書、評価人が作成する評価書などの作成費用に充当されるほか、官報への公告の費用となります。予納金は見込み額であるため、不足すると追加金を要請される事もあります。
競売によって競売物件が売却されると、その代金から予納金は返還される事となります。競売の代金は債務者の財産を強制的に売却してお金に換えたものですから、その売却代金から返還されるということは結局のところ債務者が費用負担している事となるのです。このような諸費用を控除した残金が債務の弁済に回り、残債があれば債務者はその残債について引き続き債務を負う事になります。
■任意売却と競売の費用
住宅ローンの返済が出来なくなってしまった場合にマイホームの売却を競売ではなく、任意売却で行うという方が増えています。任意売却を行う場合でも費用は掛かりますが、その費用は売却価格で精算されるため、原則として債務者が最初に持ち出す費用は発生しません。
任意売却と競売の費用を比較すると、実は競売で債務者が負担する費用のほうが安くなる傾向があります。しかし、一般の売買市場で売却できる任意売却での売却価格は競売市場での売却価格に比べて高額となるために、最終的に残債が少なくなることから任意売却のほうが債務者にとって有利なのです。
費用以外にも任意売却には、ローンの返済が出来なくなって手放すことを知られずに売却する事ができたり、マイホームの明け渡しの時期を買主と交渉できたりというメリットもあります。負担する費用が競売より高くても多くの人が任意売却を選ぶのにはそれだけの理由があるからなのです。