住宅ローンの返済の滞納を続けていると、債権者である金融機関はできる限り融資金額を回収しようとします。具体的には抵当権の実行により住宅ローンの目的物である住宅を競売によって売却し、売却代金をもって回収を図ります。
しかし、住宅ローンの残債が全額回収できるとは限りません。競売で売却した結果、回収した金額を控除しても、なお残債が発生した場合には、その残債はどのような扱いとなるのでしょうか。
■開札結果が出るまで売却金額は不明
裁判所で行われる不動産競売は、一般的に期間入札で行われます。期間入札とは、裁判所が1~2週間程度の期間を定め、その間に購入希望者が購入しても良いと思う金額で入札を行い、最も高い金額を入札した者が落札者となる入札方式のことです。
期間入札による入札の結果は、開札まで待たなければならず、一度入札した金額は入札期間内であっても変更することはできません。
したがって競売の結果、物件がいくらで売却されることになるかは、開札されるまで分かりません。もしかすると高額で落札されているかもしれませんし、最低売却価格に近い金額で落札されるかもしれないのです。
■ローンの残額と競落価格
例えば2000万円のローンの残金がある場合に、競売の結果、競落価格が2000万円であったとしても、ローンの返済は完済とはなりません。実は競落価格から競売の手数料などが差し引かれた金額がローンの返済に充当されるためです。
競売によって住宅ローンの残額を大きく上回る金額で売却でき、住宅ローンの残額、競売の手数料等を控除した結果、残金があれば債務者に渡されることになります。
しかし、競売による売却価格は一般の売買市場の7割程度と言われており、競売の売却金額ではローンの残額を全額返済することができないケースが多いのが実情です。
ローンの返済が完了しない場合には残債が発生することになります。
■残債の扱いはどうなるか
競売の結果、残ってしまった債務にも当然に返済の義務があります。債権者にも依りますが、職を有し、返済能力があると認められると裁判を経て給料の差し押さえなどを受けることもあります。
このため最終的には自己破産を選択する方も多く、自己破産の理由の2割程度が住宅ローンであるとも言われています。
競売以外に任意売却という方法があります。任意売却は競売と異なり、債権者の承諾を得ることで一般の市場で担保物件を売却することが可能となります。
任意売却であれば、残債が発生した場合の返済方法についても債権者と交渉することが可能となり、無理のない返済計画を立てることもできます。住宅ローンの返済に困ってしまったら任意売却も検討に加えてみてはいかがでしょうか。