平成17年4月1日から、不動産の競売は売却基準価額制度にて行われています。この制度における売却基準価額はどのように決められるのでしょう。また、売却基準価額はなぜ一般の売買市場よりも安い金額となるのでしょうか。
■売却基準価額制度とその役割
売却基準価額制度では、入札する金額は、「売却基準価額」の8割以上の金額でなければなりません。この8割の価格が「買受可能価額」となります。
不動産の競売で売却基準価額制度が無かったら、何が起こるでしょうか。
もし、入札妨害や談合などがあれば、不当に安い金額で売却が決まってしまうかもしれません。そうなってしまいますと、不動産競売のそもそもの目的である債権の回収が果たされなくなってしまいます。したがって、売却基準価額制度の運用によって、一定の金額以上でなければ落札とならないようにしているのです。
■売却基準価額はどのように決定されるのか
売却基準価額について民事執行法第60条第1項では次のように定めています。
「執行裁判所は、評価人の評価に基づいて、不動産の売却の額の基準となるべき価額(以下「売却基準価額」という。)を定めなければならない。」
これによると売却基準価額を決定しているのは執行裁判所で、評価人の評価に基づいているということが分かります。
執行裁判所から選任された不動産鑑定士が評価人となり、競売物件の市場価値を求め、これに「競売市場修正」として3~4割の減価を行った価額を評価額とし、この評価額を持って裁判所は売却基準価額として決定することが一般的に行われています。
■売却基準価額は安いのか?
このように決定した売却基準価額は、市場価格の6~7割となります。売却基準価額制度では買受可能価額は売却基準価額の8割ですから、買受可能価額は市場価格の概ね半分程度ということになります。これだけをみれば確かに安いですが、理由があります。
競売物件では、瑕疵担保責任など通常売買で課される売主側の責任が認められていないため、トラブルがあっても落札者が自己解決しなければならず、事前に物件の内見などもできません。
したがって競売物件は不測の損害が発生することもあり、そのようなリスクを落札人に負わせることもあるため売却基準価額は安くなるのです。このため、一概に安いといえる訳ではありません。
任意売却では、瑕疵担保責任も負い、内見などにも対応するため、競売のような特有の減価をする必要がありません。したがって、通常の不動産売買と同様の扱いとなり一般の売買相場で成立する価額となるのです。