住宅ローンの滞納で自宅を手放さざるを得なくなった時、競売より比較的負担の少ない処分方法が任意売却となります。これを行う際には、様々な手続きを行うこととなりますが、どのような書類が必要となるのでしょうか。任意売却の流れに沿って見ていきたいと思います。
任意売却とは
金融機関から住宅ローン融資を受けて自宅を購入した際、主に月々のローン支払いによって借入金を少しずつ返済していくこととなります。しかし、およそ3~6ヵ月ほど滞納が続いてしまうと、月々の分割返済が不可能となり、残額一括支払いを求められるようになります。
そうなるとたいてい、自宅を手放しその売却資金で借金を穴埋めしなければならなくなります。事態をそのまま放置しておけば自宅は強制的に差し押さえられ、競売にかけられて正規の不動産価格より安価に売り渡されてしまいます。
その競売とは対照的に、正規の不動産価格に準じて自宅を売却する方法が、任意売却となります。任意売却では、競売より多額で売却できる見込みがあるため、その分借金を減らせるわけです。
任意売却の手続きと必要書類
任意売却に着手する場合、主に以下のような流れで進めていくことになります。その時々に必要となる書類と併せて見ていきたいと思います。
不動産会社との媒介契約
最初に行う手続きは、任意売却の売買仲介を行う不動産会社との媒介契約です。これにより不動産の買い手探しや、売買成立に不可欠な交渉および専門的な手続き業務について不動産会社に依頼することとなります。
この段階で必要となる書類は、自身の身分証明書および印鑑、自宅の登記済権利証の写し、自宅購入時の書類一式、債権者側からの通知文書などです。自宅購入時の書類は主に不動産売買契約書など、自宅の広さ・間取り・築年数がわかるものとなります。
債権者側からの通知文書は、督促状など借入および滞納状況がわかるもの、競売や差し押さえに関する通知書などが挙げられます。
債権者から任意売却同意を得る交渉
次いで、契約ローン残額すなわち借金の返済先である債権者から、任意売却への同意を得る交渉に入ります。
住宅ローン契約によって、貸し手側すなわち債権者側には抵当権が認められることとなります。つまり、借り手側すなわち債務者側の支払いが不履行になった場合、債権者は、住宅の差し押さえおよび競売によって借金の一部返済を確保できるよう、裁判所に申立てることができるわけです。
月々のローン分割払いが認められている段階では、債権者はローン借入先の金融機関です。しかし、借入金残高の一括払いを求められる状況になると、債権者はローン契約先の金融機関ではなく、保証会社に変わっています。保証会社は、債務者に代わってローン未払い分を肩代わりする代位弁済を行うことにより、金融機関から債権を譲り受け自らが債権者となるわけです。
任意売却においては、その保証会社に抵当権を抹消してもらう必要があります。また、ローン滞納以外に該当住宅の固定資産税など税金にも滞納があった場合、税金納付先である行政も差し押さえの権利を持つこととなります。そのため、税務署や市町村など行政との交渉も必要です。
これら交渉を通して、任意売却における債権者側の回収額や、売却後に残る借金についての返済計画などに目途がつくわけです。
交渉においては、媒介契約を結んだ不動産会社が主に請け負うことになります。しかし場合によっては、手続きや書類の追加提出など、債務者自身も交渉に携わるべき必要性が生じることもあるでしょう。
不動産売買契約
債権者側からの同意を得、不動産の買い手が見つかると、売買契約の段階に入ります。
売買契約書など、契約時に用いる書類は不動産会社が用意することになるでしょう。
債務者側が用意するべきものとしては、身分証明書、実印、印鑑証明書、住民票、登記済権利書の原本などが挙げられます。一般的な不動産売買において売主側が用意すべきものとほぼ同様と考えて宜しいでしょう。
まとめ
以上のように、任意売却の進め方に併せながら、債務者側が用意すべき書類について確認してまいりました。まとめると次の以下の通りとなります。
◆不動産会社に任意売却を依頼する媒介契約時には次のものが必要。
〇 身分証や印鑑など本人であることを証明する書類
〇 該当物件すなわち自宅の登記識別情報
〇 売買契約時の状況が把握できる書類
〇 ローン滞納以降の状況が把握できる書類
◆債権者との交渉においては、不動産会社からの求めに応じて用意。
◆売買契約締結では、一般的な不動産売買における売主側と同様の書類。
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