人が亡くなると被相続人となり、その遺産は相続人によって相続されることになります。このとき遺言がなければ相続人の間で遺産分割協議が行われ、当該協議で合意した内容に基づき遺産分割協議書を作成して遺産分割を行います。しかし、債務の取扱いには注意が必要です。
遺産分割協議書とは
法定相続人などが集まり被相続人の財産や債務などの遺産をどのように分割するかという話し合いを遺産分割協議といいます。民法では遺産分割について法定相続分といって法定相続人の取り分を定めています。
しかし、遺産分割協議では全ての相続人が合意をすれば、法定相続分と異なる分割をすることが認められています。その合意した内容を書面にしたものが遺産分割協議書です。法定相続分で遺産を分割する場合には遺産分割協議書は必要ありませんが、異なる場合には不動産や銀行口座の名義変更のために必要となります。
債務についての遺産分割協議書への記載
遺産分割協議で合意した内容は遺産分割協議書に記載されることになりますが、財産だけでなく債務についても記載をすることになります。債務には治療費や入院費、税金、金融機関からの借入金などがあります。
これらのうち入院費や税金は一括で支払いをしてしまうのが通常ですが、金融機関からの借入れの場合にはローンなどの分割返済を行っているものもあります。これらの債務についても法定相続分と異なる分割を行う場合には、相続人の誰がどれだけを引き受けることになったのかを遺産分割協議書に記載しておく必要があります。
債務の相続
遺産分割協議書の作成によって法定相続分と異なる相続ができますが、債務については注意が必要です。債務も遺産分割協議によって法定相続分と異なる分割はできるのですが、債権者の承諾を得ていなければ有効なのは相続人の間だけの事となるのです。
例えば相続人となるのが二人の子供だとして、5千万円の債務が相続の対象となったとき、片方が全ての債務を相続すると遺産分割協議で決めたとしても債権者がそれを承諾していなければ、債権者は他の相続人に法定相続分に基づく2500万円の返済を求められた場合には、遺産分割書を提示したとしてもこれを理由に返済を拒むことはできません。
遺産分割協議で債権者の承諾を要せずに債務の分割を自由に決められるとしたら、債務だけを特定の相続人に相続させることが出来てしまい債権者にとって不利となります。
このため債務を法定相続分と異なる分割をする場合には、事前に債権者の承諾を得て債権者と相続人全員との間で債務の免責と引受についての契約を締結する必要があるのです。