弁護士に債務整理を依頼する場合、債務者は弁護士との間に委任契約を締結します。
このとき作成された委任状に基づき弁護士などは債務者の代理人となって債務整理を行うことになりますが、この委任状は何故必要になるのでしょうか。
■債務整理とは何か
債務整理とは借金などの返済が困難となり、苦しんでいる債務者の救済措置として設けられた制度です。この債務整理には、大きく分けて3つの種類があり、①任意整理、②民事再生、③自己破産といった方法があります。また、すでに返済の終わった借金で過払い利息の返還請求もこの債務整理に含むことがあります。
これらの債務整理は、借金などを整理して返済額の減額や帳消しなどを行うことで、債務者の再スタートを支援するものです。内容は専門的なものが多いことから、通常は委任状を作成し、債務者が弁護士などに代理権を付与して手続きが行われます。
■委任と受任
債務整理を行うには、弁護士などに依頼を行って代理人として債務整理を進めてもらうことが一般的です。この代理人として動いてもらうためには、債務者は代理権を付与する必要があり、この代理権付与のために委任契約を締結し、委任状を作成するのです。委任状によって委任の内容を明確にすることで、債権者も安心して交渉に臨むことができるという訳です。
委任状には特に定められた書式はありませんが、日付、委任者、委任事項、受任者などは明確に記載して、後日のトラブルのもとにならないようにする必要があります。
委任を受けた弁護士等は債権者に対して、債務者が債務整理の手続きを代理人に委任し、これを受任した旨の通知を行います。これを受任通知と呼びます。この受任通知によって債権者は債務者に対して直接借金返済の催促や取り立てをすることができなくなります。また、債務整理の手続きが完了するまでの間は返済も中断となりますので、債務者は厳しい取り立てから解放され、返済に回していたお金を生活再建のための貯蓄に回すことが可能となります。
しかし、良いことばかりではありません。
まず、信用情報にキズが付き、新たな借入だけでなく、クレジットカードの新規申し込みができなくなります。また、借金について連帯保証人がいる場合には、連帯保証人に請求が行くことになります。これらのことについて、しっかりと認識をした上で債務整理を行うようにしましょう。
■債務整理と任意売却
住宅ローンの返済ができなくなりマイホームを売却して返済に充てて、残債の返済計画を別途協議する任意売却と、借金の返済に困った結果、委任状などによって弁護士などに代理権を付与して法律に則った手続きを進める債務整理は似ていますが、少し異なります。
どちらが良いのかは、状況によっても異なりますので一概には言えませんが、住宅ローンの返済が一番の問題ということであれば、手数料の支払いなどの観点からは任意売却がシンプルかもしれません。