日本の不動産は土地と建物を別個のものと捉えています。このため土地と建物は別々に登記することが可能であり、土地と建物の所有者が別人になるということも起こります。このとき建物の存続には土地に対して借地権や地上権といった権利が必要となりますが競売では法定地上権を強制的に認めるケースがあります。
■土地に対する権利
土地と建物を別個の不動産としていることから所有権は当然で、抵当権のような担保権についても土地と建物それぞれに登記することが認められています。通常は土地と建物両方に抵当権が設定され、競売でも土地と建物が一括で売却されることになります。しかし、何らかの事情によって、土地又は建物の何れか一方だけに抵当権が設定された場合、土地又は建物の何れか一方だけを競売に掛けるということも可能です。
このような競売が行われた結果、土地と建物の所有者が異なることになりますが、土地に対する権利が無い建物は土地の所有者から退去するように求められても対抗する権限が無いことになってしまいます。そこで法定地上権の成立によって建物の保護を図ることになるのです。
■法定地上権とは
建物が存続するためには土地に対する権利が必要になります。土地に対する権利を持たない建物を競売で売却しても入札を期待することは難しいといえます。そこで法律では一定の条件を満たす場合には法定地上権といって強制的に建物の土地に対する権利を認める制度を設けています。
法定地上権の成立は①抵当権設定当時に既に建物が存しており、②土地と建物の所有者が同一であって、③土地又は建物の何れか又は両方に抵当権が設定され、④競売が行われた結果、土地と建物の所有者が異なることになるという4つの要件を満たすことが必要です。法定地上権が成立するのであれば建物だけを競落しても土地の所有者に権利を主張することができ、退去する必要も無くなります。
■法定地上権が成立しないケース
上記の要件が成立しなければ土地に対する権利が認められないかというと、そんなことはありません。抵当権設定当時に土地と建物の所有者が別であれば、そこには借地権などの権利が設定されていたと考えられます。その権利も合わせて競売の対象となります。
しかし、抵当権が設定された後に建てられた建物については土地に対する権利は認められません。権利を認めてしまうと建物が無い状態で担保価値を把握した抵当権者の利益を害することになってしまうためです。
もし、建物だけが競売の売却対象となっている場合には、建物の土地に対する権利が何に基づくものなのかを十分に確認することが必要になります。