不動産基礎知識

不動産投資に活かせる行動経済学の理論

経済学のモデルに心理学的な原理を当てはめて考察する行動経済学。その中で唱えられる諸理論は、不動産投資に取り組む際、有効に活用できるものと考えられます。不動産投資の分野に応用が利く行動経済学の理論としてどのようなものが挙げられるのか、見ていきましょう。

不動産投資と行動経済学

不動産投資には主に2通りのタイプがあります。その1つは購入した不動産を売却しその差額による収益獲得を目的とするキャピタルゲイン型。もう1つは不動産物件の賃貸経営を通して月々の家賃収入から収益を得ることを目的とするインカムゲイン型です。

手法こそ違いますが、いずれも人間相手の取引により収益獲得を目指すものであるという共通性があります。そこに着目すると、人間の行動心理を経済学モデルに反映する行動経済学の考え方を踏まえておけば、不動産投資の分野で有利に働くと言えるのではないでしょうか。

以下、不動産投資に役立てられそうな行動経済学上の理論について確認していきたいと思います。

現在志向バイアス

将来的な大きな利益よりも、目先の利益を優先する傾向を指すものであり、近視眼性とも言われます。これを不動産投資に照らし合わせれば、不動産の所有者に物件を用いて収入を得る必要性が生じた場合、賃貸経営型のインカムゲインに適した物件でも、売却益型のキャピタルゲインが選ばれやすい、と言うケースが挙げられるでしょう。

取引の相手方が現在志向バイアスを示しやすくなる交渉を行うことで、こちら側の利益に結びつけられるわけです。

フレーミング理論

情報やデータ等の見せ方次第で、相手が受け取る印象が異なることを示す理論であり、極端回避性とも言われます。商業地から遠い物件について、そのデメリットを表に出さず「静かでゆったりした住み心地」等と表現することで逆に好印象を引き出す売り込み方に応用できるでしょう。

プロスペクト理論

同等の利益と損失があった場合、損失のほうがより意識されこれを回避しようとする傾向を意味し、損失回避性とも称されます。

不動産収入の必要に迫られた物件所有者が、たとえインカムゲインに有利な物件を所有していても、経営リスクを回避したい意識が強く出て、売却によるキャピタルゲイン型の収入を選び取ってしまうケースがこれに当たると言えるでしょう。

アンカリング効果

最初に見た数字や印象に判断を左右されやすい傾向を意味します。

例としては、不動産売買において希望する売値以上の額を始めに提示しておき、売買交渉の後に金額を希望価格へ引き下げれば、相手方に買い得と感じさせ購入意欲を高められる等が挙げられます。

サンクコスト

既に費やした金銭や時間もしくは労力を指し、埋没費用を意味します。人間は大抵の場合、サンクコストが増えれば増えるほど、それを費やした対象を諦めにくくなる傾向を示すと見做されています。

たとえば不動産経営において既に多額の支出があった場合、収益が見込めないにも関わらず元を取り戻そうと現状を継続しがちなケースがこれに当たるでしょう。メリットの有無を認識し、サンクコストの心理に陥っていないか見直す姿勢が肝要です。

まとめ

以上のように、不動産投資の分野に応用できそうな行動経済学の理論として、
直近の利益を優先しがちな状態を表す現在志向バイアス、
情報の示し方で与える印象を左右できるフレーミング理論、
利益以上に損失に目を向けがちな心理を指すプロスペクト理論、
最初に受けた情報から判断しがちな傾向を意味するアンカリング効果、
費やしたコストの大きさで諦めがつかなくなってしまうサンクコスト、
について確認してまいりました。

投資に関する事や不動産の事なら全ておまかせ、ご相談も「アブローズ」までご一報を下さい。

ピックアップ記事

  1. 不動産売却における委任状取り扱い説明書
  2. 不動産売却の時に重要な登記費用について
  3. マイホームを手放すことになってしまったら
  4. 実は厳しい税金滞納への対応
  5. 競売における売却基準価額とは何か

関連記事

  1. 不動産基礎知識

    問題になっているマンション管理に関するニュース

    不動産投資を行う際に専業大家でない場合、賃貸管理や物件の管理を管理会社…

  2. 不動産基礎知識

    確実に利益を得る不動産投資の選択肢

    近年のゼロ金利政策によって、預貯金の利率での投資は期待できない状況です…

  3. 不動産基礎知識

    家を売却するなら5年以内!? ~少しでも高く売る為のポイント~

    家を売却するには、様々な理由がおありになる事と思います。しかし購入して…

  4. 不動産基礎知識

    競売の申立ての取り下げと予納金との関係

    競売の申立てには、予納金が必要です。申立人が納めた予納金は競売の手続き…

  5. 不動産基礎知識

    競売の手続きは債務者の意思と無関係に進む

    住宅ローンの滞納が続くと、債権者が債権を回収するために設定した抵当権に…

  6. 不動産基礎知識

    単身赴任によって住宅ローンの控除が受けられない?

    住宅ローンを利用する人にとって住宅ローン控除は大変ありがたい制度です。…

おすすめ記事

おすすめ記事2

特集記事

アーカイブ

  1. 債務整理

    債務整理における支払い明細の取扱い
  2. 任意売却

    住宅ローン返済に関する不安をできる限り小さくするには
  3. 賃貸オーナー様

    不動産の賃貸管理には契約書に印紙が必要となる
  4. 任意売却

    任意売却と債権者 ~抵当権の抹消と同意~
  5. 賃貸オーナー様

    【家賃】督促状を活用し家賃滞納に対処しよう!!
PAGE TOP