競売には、一括売却と一括競売という言葉があります。この二つの言葉は似ていますが、全く異なる意味があります。それぞれどのような意味があり、どのような違いがあるのでしょうか。
■一括売却とは
競売による売却は個別売却を原則としますが、個別売却を行ってしまうと価値が下がってしまうものがあります。マイホームが競売になった場合に、抵当権は通常土地と建物の両方に設定されていますが、この土地と建物を別に売却すると個別売却となります。しかし、土地と建物を一緒に売却するほうが、個別に売却するよりも価値が高くなります。
このようなとき執行裁判所は、個別売却によるのではなく、複数の不動産を一括して売却することを選択することができると定められています。このようにして複数の不動産を一括で売却するほうが、不動産の価値が高まり落札金額も高くなるのであれば、まとめて売却する一括売却を行うことができるのです。
一括売却の例として、敷地権の設定がされていないマンションの土地に対する持ち分や、戸建住宅に面する前面道路の共有持ち分などが挙げられます。
■一括競売とは
一括売却と似ている言葉に一括競売があります。この言葉は良く似ているため混同されることも多い言葉です。一括競売とは、抵当権が設定された土地の上に抵当権が設定されていない建物について、土地の抵当権の実行で土地の上の建物も一緒に売却することをいいます。
一括売却では、売却されるのは抵当権が設定されている不動産であるのに対して、一括競売では抵当権の設定がされていない不動産も一括で売却されていまうという点で大きな違いがあります。
この一括競売を行う条件として、土地の上に建物が無い状態で土地に抵当権が設定され、土地の抵当権が設定された後に土地の上に築造された建物であることが必要です。
一括売却を行うかどうかは裁判所で判断を下すことができましたが、一括競売を行うかどうかについては申立人が選択できることになっています。
■一括売却と一括競売の共通する考え方
一括売却も一括競売も底にある考え方としては共通しているものがあります。それは、債権者保護です。高い金額で売却できることで最も助かるのは債権者です。建物の負担付の土地は高く売却することが出来なくなりますので、一括競売の選択権が債権者に認められていることは債権者保護となります。
抵当権が設定されている土地に抵当権の設定の無い建物を建てても土地の抵当権が実行された場合には無関係という訳にはいきません。
手放す以外に方法が無ければ競売以外の方法で売却してできる限り手元に残るお金を多くするなどの対応策を検討しましょう。