競売に掛けられたマイホームの所有権は、買受人が落札代金を支払った時点で所有権は買受人に移転することになります。このためマイホームに居住していた旧所有者は、住んでいた家に対する所有権を失うため、退去せざるを得なくなりますし、退去を拒否しても強制執行という手段が取られれば強制的に追い出しに合うことになります。
強制執行による追い出しは周囲の注目も浴び、体裁の良いものではありません。何か良い方法はないものでしょうか。
■追い出されるまで居住を続ける理由
競売における追い出しは、裁判所の執行官によって行われます。ここまで来ると、抵抗しても拒んでも効果はなく、無理な抵抗を続けていると法律に抵触して逮捕ということもあります。
短期賃貸借保護制度が廃止される平成16年3月31日までは、所有者以外の者で短期賃貸借契約が締結されていることを主張する居住者がいる競売物件がそこそこありました。この保護制度を悪用して、落札者からお金を取ることを目的とする者もおり、いつ締結したのか怪しい契約書が良く出てきたものです。
しかし、この短期賃貸借保護制度が廃止された今では、居住者は退去を求められたら退去するしかありません。
■買受人から引っ越し代を貰えるか
競売の特徴としては、入札で売却が決定するため開札があるまで誰が落札するのか分からないということです。例えば親族などが入札に参加してくれたとしても、開札の結果、他の人が落札者となったということは良くあることです。このため落札後の動きは落札者によって大きく異なります。
落札者によっては早く退去してくれるのであれば、引っ越し代をある程度工面することを約束してくれることもあります。一方で、一切の交渉は行わず、期日までに退去しなければ、強制執行の手続きを取り、追い出しに即座に着手するという人もいます。最近は後者のように淡々と強制執行の手続きを取る業者の方も多くなったといわれています。
したがって競売では、追い出しに際して引っ越し代は基本的に貰うことはできず、もし、貰えたら運が良かった程度に考えておいたほうが良いでしょう。引っ越し代の提示を期待してはいけないということです。
■任意売却なら引っ越し代も交渉次第
競売では問答無用の追い出しも、任意売却であれば交渉ごとになります。債権者との交渉によって引っ越し代を捻出して貰うのも、購入者との交渉によって退去の日程も融通が利くことがあります。任意売却というと競売よりも高い金額での売却に目がいきがちですが、それ以外にも債務者にとってはメリットのある売却方法なのです。
競売による問答無用の強制退去を回避したいとともに、少しでも良い条件のもとに退去をしたいとお考えであれば、一度任意売却の専門業者に相談するなどして自分自身にとってより良いと思う選択の検討材料にしていただければと思います。