競売では、スケジュールが公告され手続きが進んでいても取下や取消になる事件も多くあります。また、裁判所の職権変更によって競売のスケジュールが変わってしまう事件もありますが、この職権変更とはどのようなものでどのような時に行われるのでしょうか。
裁判所の職権による変更とは
裁判所の競売では、取下や取消によって競売手続きが途中の段階であっても終了することがあります。取下は、競売実行の申立人が競売の取下を申し出ることで行われます。
取消は、競売の手続きが違法であることが判明した場合や、競売の目的物が火災などにより消滅してしまった場合、3回の売却を実施したにも関わらず売却の見込みが無いと判断された場合などに裁判所が競売手続きを終了させます。
また、取下や取消とは異なり、裁判所の職権による変更というものがあります。
職権とは、職務を行うに際し必要であるために与えられている権限を意味します。国などの機関や公務員などがその地位や資格に基づき行うことが認められている行為について、その権限と範囲のことを意味します。したがって裁判所による競売の職権変更とは、職権に基づいて公告により一旦定められた競売による売却手続きの内容を変更することです。
競売物件の情報が変更になる場合
裁判所の職権による変更の例として、競売物件の情報が変更になる場合が挙げられます。例えば裁判所によって作成される「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」(いわゆる3点セット)は、買受けをしたいと考えている人達にとって大変重要な資料となります。
この内容に変更を加えるべき事由が生じた場合には、その内容の軽重を十分に吟味した上で職権により売却手続きの内容を変更することがあります。例えば評価書作成後に売却基準価格に影響を与えるような新たな事実が発覚した場合などには、評価額の見直しを行うために入札までのスケジュールを変更して遅らせるなどの対応が取られることになります。
債権者からの延期申請
裁判所の職権による変更は、裁判所独自の理由だけでなく、債権者すなわち競売実行の申立人からの延期申請によって行われることもあります。この場合、延期申請を受けた裁判所が職権によって売却の日時、場所などが定められた売却実施命令の執行を一時延期するという形になります。
これは任意売却による売買交渉が進行しており、条件を詰める状況になってきている段階のため競売による入札を先送りにすることが目的です。ここで取下にしないのは、まだ任意売却が不調に終わってしまう可能性があるため、競売による売却を選択肢として残すことにあります。