所有地に建物を建てるために住宅ローンなどを利用する場合、土地と建物の両方に抵当権を設定する事になります。
借入額などから土地を担保に供するだけでも十分だと思われるケースであっても同様です。これは万が一競売となった時を意識しているのです。どういう事でしょうか。
■抵当権の利便性
金融機関は住宅ローンによって融資を行う場合に担保権として、抵当権の設定を債務者に求めます。金融機関は土地と建物の価値を担保に融資をする事になりますが抵当権は占有を要件としません。これによって債務者は住宅ローンを返済しながらマイホームを自宅として使用する事が可能となります。
もし、債務者の返済が滞るような事があれば、金融機関は裁判所へ抵当権の実行を申し立てる事で、裁判を経る事なく担保である土地と建物を競売に供する事ができます。この様に抵当権は、債権者と債務者の両方にとって利便性が高い担保権なのです。
■土地と建物の両方に抵当権を設定する理由
例えば3000万円の価値が認められる土地の上に建物を建てる際に、2000万円を住宅ローンで借り入れようとした場合であっても、土地と建物の両方に同じ抵当権を設定する事を金融機関から求められます。土地の価値だけで十分に担保できるのに建物にまで抵当権を設定するのはおかしいと思われる債務者の方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、抵当権の設定が土地だけで競売となってしまったとき、その土地の価値は大きく落ちてしまうのです。
土地だけに抵当権が設定されている状態で競売となると、競売による売却の対象は土地だけとなります。このときの土地は建物の負担付きという事になり、大きく価値が落ちてしまうのです。
住宅ローンの場合、土地上に建物が建つ事を前提としているため、土地だけに抵当権を設定していても、抵当権に基づいて建物からの退去や建物の撤去を求める事ができません。したがって競売で土地を落札しても、基本的に競落人は土地を自由に使う事は出来ず借地権設定に基づき建物所有者に地代を求める事しか出来ないという事になります。
金融機関が抵当権設定を求める目的は万が一のときの債権回収のためであり、例え土地単体では価値が十分にあったとしても、土地上の建物にも抵当権の設定を求めるのです。
■担保価値は土地と建物の両方
日本の不動産は土地と建物は別物であるという考えがあります。このため土地と建物はセットではなく、別々に売却することが可能です。しかし、土地と建物を別々に売却となると借地権が発生するため権利が不安定となり、その価値は大きく落ちる事になります。
このため金融機関は土地と建物の両方に同じ抵当権を設定して、万が一の競売の際には一緒に競売に供する事が出来る様にしているのです。