多重債務などによって返済が困難になった債務者の救済方法として債務整理が認められています。債務整理は主に任意整理、個人再生と自己破産の3つですが、これらの債務整理の件数はどのように推移してきているのでしょうか。
また、その要因について考えてみたいと思います。
債務整理の件数
債務整理のうち個人再生と自己破産の件数は平成18年には合計で20万件を超えていましたが、減少傾向が続き平成27年の時点では半分以下の約8万件となりました。一方で任意整理は裁判所を通す事なく、弁護士等が直接債権者と交渉を行うため統計が存在せず、正確な件数は分かりません。
しかし、近年では過払い請求などが多く行われるほか、インターネットの普及によって任意整理の情報が広がった事から、自己破産、個人再生に至る前に任意整理を行う人が増加している事が考えられます。
債務整理件数減少の理由
債務整理のうち任意整理を除いた件数は減少を続けてきましたが、これは何故なのでしょうか。任意整理の浸透によって自己破産と個人再生の件数が減少した事はひとつの要因だとは思いますが、平成22年6月に制定された総量規制が件数減少の大きな要因だと考えられます。
総量規制とは、貸金業者から個人の借入総額が制限される仕組みの事であり、原則、年収等の3分の1までに制限されます。すなわち年収600万円の人は200万円までの借入に制限されるという事です。
ちなみに、金融庁が発表している貸金業関係統計資料によると、平成18年3月末では約20.9兆円だった消費者向貸付残高が、平成28年3月末には約6兆円にまで減っています。自己破産や個人再生は借金苦からの救済措置である事を考えれば、借金総額がここまで少なくなっている訳ですから、債務整理の件数の減少の大きな要因になっている事には間違い無いでしょう。
ちなみに総量規制の対象から不動産購入などは除外されていますので、年収を大きく超える住宅ローンであっても借り入れる事が可能となっています。
借入は慎重に
債務整理の件数は減少傾向にありますが、直近では総量規制から外れている銀行のカードローンの利用により借金苦に悩まされている人が増えていると言われています。実際に28年などでは一部で債務整理の件数が増加に転じてもいます。
借金は決して悪い事ばかりではありませんが、無計画に借入をしてしまうと返済が出来なくなってしまい、失うものの方が多くなってしまう事もありますので、慎重に検討される事をお薦めします。