相続が発生した場合、現金や有価証券などであれば減価償却が特段の問題になる事はありませんが、事業に供する不動産などを相続した場合に減価償却が問題になる事があります。
減価償却資産を相続した場合には何に気を付けなければいけないのでしょうか。
減価償却を要する資産とは
減価償却を要する資産を減価償却資産といいます。事業を営んでいる場合、一般的に資産の取得金額全額を一会計期間で費用とする事が出来ますが、減価償却資産については取得金額を費用化耐用年数の期間に応じて費用化する事が法令上定められています。
減価償却を要する資産は、使用や時の経過に応じて価値が減じていく資産であり、具体的には事業用に供している取得金額が1単位当たり10万円以上の資産で建物、車両、機械などが該当します。不動産の賃貸経営を行っている場合には、賃貸不動産の建物の減価償却が問題となります。ちなみに土地は減価償却の対象とはなりません。
減価償却資産の相続
相続が発生した場合には、個人の場合は相続遺産の価額を算出して相続税の納税の義務の有無を確認する必要がありますが、賃貸経営に供している不動産があれば、相続税だけでなく減価償却に関する事項について引き継ぐものと引き継がないものについて注意が必要となります。
引き継ぐもの
減価償却資産の相続において引き継ぐものは、取得価額、耐用年数、事業専用割合、未償却残高となります。
取得価額は被相続人が取得に要した金額の事です。償却後の簿価は取得価額ではない事に注意が必要です。耐用年数もそのまま引き継ぎます。事業専用割合も基本的に引き継ぐ事になります。
しかし、相続後に専用割合が変更となった場合には変更の手続きを取る事ができます。未償却残高もそのまま引き継ぐ事になります。このとき相続人が事業を引き継いで初めて行う確定申告における未償却残高は、被相続人が行った確定申告上の未償却残高から、相続人が初めて行った減価償却費を控除した金額となります。
引き継がないもの
減価償却資産の相続において引き継がないものは、取得年月日、償却方法となります。
相続による相続人の資産の取得年月日は、被相続人が亡くなった日であり、被相続人が取得した年月日とはなりませんので注意が必要です。償却の方法には定額法と定率法があります。
まず、被相続人が減価償却の方法に定額法を採用していた場合には相続人も定額法になります。被相続人が定率法を採用していた場合には税務署に届出を行うことで定率法を採用することが可能です。
しかし、建物について現在は定率法を選択することが出来ないため、被相続人が定率法を採用していたとしても、定率法を引き継ぐことは出来ず、定額法を採用しなければいけない事に注意が必要です。