相続した不動産を売却して利益が出た場合には、譲渡所得に基づく所得税が課税されます。しかし、相続によって相続税も支払っている場合に二重課税ではないのかという意見もありますが、これはどのようなことなのでしょうか。
二重課税とは
二重課税とは同一の課税物件に対して同一または同種の租税が重複して課税される状態をいい、二重税、重複課税、タックス・オン・タックスなどとも呼ばれることがあります。二重課税の一例として、企業の利益に法人税が課された後に、当該利益から配当を行った際に再び所得税が課税されるということが挙げられます。
税負担は公平性が重視されるため、この公平性が損なわれるような課税が行われている場合には是正措置が取られるのが通常です。相続税が課税されるケースで、相続する不動産を売却した場合に利益が発生した場合に譲渡所得に対して所得税が課税されるケースは二重課税ではないのかという意見もありますが、この課税についてみていきます。
相続税と所得税
相続税と所得税については、二重課税の問題が以前から取り上げられてきました。相続税の対象となった生命保険金を年金払いで受け取る場合に課税される所得税について課税を取り消す旨の判決が最高裁判所で出されたことがあります。
この裁判では相続税の対象となった生命保険の金額について所得税を課税することは不適切な二重課税となると判断され、所得税による課税を取り消すという判決が出されました。
一方で相続した不動産を売却するケースでは、発生した譲渡益について所得税が課税されることになり、この譲渡益には相続税の課税対象となった土地評価額も含んで計算されることになります。これは相続税が支払うことができないために相続した土地を売却するケースであっても同様に相続税と譲渡所得に対する所得税が課税されます。
相続税と譲渡所得に対する所得税の取扱い
相続税を納税するために売却したのに、そこに所得税が課税されるのは二重課税ではないのかという意見は色々なところで出ますが、課税当局は二重課税ではないと判断しています。相続税は財産を相続したことに対する税金であり、譲渡所得に対する所得税は実現した財産の価値の増分に対する税金であるとしているためです。
このため現行の制度下では、相続財産を売却した場合に利益が発生すると相続税以外にも所得税が課税されることになっています。しかし、相続の申告期限から3年以内の売却については取得費に譲渡する不動産に対応する相続税額を加えることができるという特例が期限付きでありますので、該当する場合には忘れずに加算するようにしましょう。