控除額を上回る金額で遺産相続が行われると相続税が発生し、相続人には相続税を納税する義務が生じることになります。相続税を納税するためや遺産分割を行うために不動産を売却したりするケースもありますが、相続財産である不動産を売却した際に売却差益が出れば、譲渡所得に対して所得税が課税されることになることをご存知でしょうか。
しかし、相続が絡んでいる場合には色々な特例が適用されることをご存知でしょうか。
長期譲渡と短期譲渡
譲渡所得に対する課税には大きく分けて2種類あります。長期譲渡と短期譲渡です。譲渡した不動産を所有していた期間が、譲渡した年の1月1日時点で5年よりも長いか短いかで、課税される税率が大きく異なります。長期であれば所得税15%ですが、短期となると所得税30%と倍の税率になってしまうのです。
相続不動産の場合、相続してすぐに売却すると短期譲渡になってしまうのでしょうか。相続不動産の譲渡においては、所有期間の起算は被相続人の取得日が引き継がれることになっています。したがって被相続人の所有期間が長期譲渡の要件を満たしていれば、相続後すぐに売却しても短期譲渡にはなりません。
譲渡費用と取得費
譲渡所得は、譲渡収入から譲渡費用と取得費を控除して求めます。更に特別控除額があれば、これを譲渡所得から控除して課税譲渡所得が得られます。この課税譲渡所得に税率を乗じて所得税が決まります。
譲渡費用とは、仲介手数料、登記費用、印紙税などの相続不動産の売却によって支払う必要の生じた費用のことです。取得費は、取得代金と取得に要した諸費用が該当します。取得した代金は、売却した不動産の取得に要した代金になりますが、相続不動産の場合には被相続人が取得に要した代金が取得代金に該当します。取得に要した諸費用は仲介手数料等が該当します。
そして、相続不動産の売却の場合には、相続税の納付期限から3年以内の譲渡であれば、相続税の一部を取得費に加算できるという特例がありますので、忘れないようにしましょう。また、取得費が判明しない場合には譲渡収入の5%を取得費として計算することが認められています。
計算の難しい譲渡所得
不動産売却による譲渡所得の計算では、所有期間の考え方や、譲渡所得税の特別控除などが一定の条件をクリアすることで適用することができるなど特例や控除について難しい点が多く存在します。
しかし、これらの控除や特例などを利用しないと、納める必要の無い税金まで納めることになりますので、相続に伴う不動産の売却が発生する場合には、早い段階で相続と不動産譲渡に詳しい税理士に依頼されることをお勧めします。