マイホームを担保にして住宅ローンなどの借入を行ったものの、返済が出来なくなり滞納を続けてしまうと、やがてマイホームは所有者の意思によらず競売に掛けられてしまい売却されることとなります。
このような話はよく耳にすることかと思いますが、そもそも競売はどの裁判所で行われて、どのような裁判所職員が関係するのでしょうか。
競売を行う裁判所とは
裁判所のホームページによると裁判所の仕事とは、「裁判所の仕事は,個人間などの法律的な紛争を解決したり,犯罪を犯した疑いがある人が有罪か無罪かを判断したりすることにより,国民の権利を守り,国民生活の平穏と安全を保つことです。」とあります。競売は、個人間で締結されたお金の貸し借りの契約に基づき、返済が行われなくなってしまったとときに貸主が取る対抗手段として行われるもので、競売事件の取扱いは裁判所の仕事のひとつとなっています。
日本の裁判所には最高裁判所のほか下級裁判所として高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所及び簡易裁判所がありますが、これらの裁判所のうち競売は地方裁判所で取り扱われています。地方裁判所は各都道府県庁所在地のほかに函館市、旭川市、釧路市にも設置されている50の本庁のほかに支部も含めると全国で253か所が設置されています。競売は主に本庁で取り扱われますが、件数などの関係により支部でも取り扱われることがあります。
裁判所で競売に携わる書記官と執行官
裁判所書記官は法律の専門家として固有の権限を付与され、その権限により法廷の立ち合いや調書の作成などを行う公務員です。書記官は競売事件においては、競売がスムーズに執り行われるように各種の事務手続きを行うほか、3点セットと呼ばれる書類のひとつである「物件明細書」の作製を行います。この物件明細書には競売によって物件を取得した際にどのような権利を引き継がなければならないかなどの重要な情報が記載されています。
裁判所執行官は各地方裁判所により任命される裁判所の職員で、地方裁判所の監督を受けますが、職務の執行について強い権限を付与されています。収入は事件の当事者が納める手数料であるため歩合制で、国から給与は受けていません。執行官は競売において不動産の状況等を調査し、3点セットのひとつである「現況調査報告書」の作成を行うほか、物件明渡の強制執行立ち合いなども行います。
なお、3点セットの残りひとつである「評価書」は、不動産鑑定士等が担当しますが、裁判所の職員ではありません。
裁判所による競売が行われる理由
競売を取り扱う裁判所は日本全国に設置されていることから、金融機関などにとっては手続きがしやすく、また、特別な権限を付与された裁判所職員によって行われる競売は債権者が権利調整などをしなくても売却手続きが進められていきます。
このことが債権者にとって、競落価格が一般売買市場よりも低額になっても競売で手続きを進めることのメリットのひとつなのです。