競売における手続きのひとつに、配当要求というものがあります。
配当要求とは、債権者が自身の持つ債権に基づいて競売による売却代金から配当してもらうことを申し出ることです。
一方、債権には時効が適用され、債務の承認など時効の中断事由に該当する行為を行わないまま時効が成立するだけの期間が経過すると、時効の援用により債権が消滅してしまいます。
この配当要求は、時効の中断事由に該当するのでしょうか。
債権に適用される時効
時効は、事実状態が正しいものでなかったとしても、その事実状態が長期間に渡って続いたのであれば、それを尊重してその事実状態を正当な法律状態として認めることを言います。
この時効が成立するためには単に事実状態が続くだけでは足らず、援用といって権利の取得や債権の消滅による利益を時効によって受けることを相手に伝えることが必要となります。
時効が成立するための期間は消滅する債権によって定められており、例えばクレジットの債権など商行為により生じた債権などは5年、個人間の借金などの債権は10年と定められています。
債権者が債務者に対し返済の請求などを行い、一部返済を受けることなどによって時効は中断しますが、競売における配当要求も時効の中断事由に該当するものでしょうか。
競売における配当要求
裁判所が行う競売では、売却代金を法律の定めに従って競売の申立人や他の債権者に配りますが、これを配当と言います。
競売では不動産の担保権者が優先され、債務名義しか有していない債権者同士の場合は平等に配当が行われます。
他の債権者が申立てを行った競売手続きに参加して、配当を受けるべき債権者としての地位を取得する方法を配当要求と言いますが、この配当要求は債権を持っていれば誰でもできるという訳ではありません。
1 執行力のある債務名義の正本を有する債権者
2 差押えの登記後に登記をした仮差押権者
3 一般の先取特権を有することを証明した債権者
のいずれかである必要があります。
時効の中断事由は請求、差押え・仮差押え・仮処分・債務者の承認の何れかに該当する必要がありますが、配当要求がこれらのどれかに該当するのでしょうか。
配当要求と時効の中断
競売における配当要求が時効の中断に該当するかというと、差押えに準ずるものとして債権の消滅時効を中断する効力があるとされています。
また、配当要求による時効中断の効力は競売の申立人が追加の手続費用を納付しなかったことを理由に競売手続が取り消された場合であっても時効中断の効力が初めから生じなかったということにはならず、取り消し決定が確定するまで継続するものであるという判例が出されています。
このため例え無配当となる恐れがあっても、配当要求をしておく方が良いと言われるのです。