自己破産の手続きを進める際に、破産管財人が裁判所によって選任されることとなります。
この破産管財人が債務者の自宅などを任意売却するケースがありますが、通常の任意売却と何が異なるのでしょうか。
破産管財人とは何か
借金の返済ができずに債務者が裁判所へ自己破産の申立を行うと、裁判所は書式のチェックを行い問題が無ければ債務者の調査に着手することになります。この調査が行われた結果、裁判所が「支払不能」と判断を下すと「破産手続開始決定」が下されることになります。
ここで債務者に金銭に換えるだけの価値のある財産があるとなれば、「破産管財人」が選任されて、破産手続きが進められることとなります。この破産管財人は通常裁判所が選任した弁護士などがなります。
なお、金銭に換えるだけの価値のある財産が無いとされると破産管財人の選任は行われず、同時廃止といって破産手続きが終了となります。また、債務者は借金を返済することができないと考えていても、裁判所が返済可能と判断すれば、破産手続開始決定は下されず、債務者の借金は免責とはなりません。
破産管財人による任意売却
破産管財人の仕事は、破産財団といって債務者の財産で換価するに値する財産の管理と処分を行うことです。破産債権者のために換価を行うため、少しでも高く換価できるのであればという観点から債務者の自宅などを任意売却することがあります。
なお、破産した債務者の自宅は破産財団に組み入れられますが、設定された抵当権は一般の破産債権より優先されるため、管財人は任意売却を行うに当たって抵当権者の承諾が必要となるなど、通常の任意売却と手順は基本的に変わりません。
しかし、破産手続きを円滑に行うために、破産管財人には裁判所に担保消滅請求を行うことが認められています。これは、任意売却による価格が不当に安いという主張や、高額な担保抹消料を請求されるなどした場合に破産管財人が裁判所に職権による担保権の削除を申し出ることをいいます。
この申出が妥当と認められれば担保権は裁判所によって削除され、妥当でないと判断された場合には競売などに進みます。
破産管財人が任意売却をする理由
オーバーローンの物件を破産管財人が任意売却することのメリットは一体何なのでしょうか。実は任意売却によって得た代金の5~10%を破産財団に繰り入れることが実務上の運用で行われているのです。この実務上の運用があるために、破産管財人は面倒があっても破産した債務者の自宅などを任意売却する動機付けが働くことになるのです。