競売では様々なパターンの売却があります。土地と建物は別の不動産であるという考えがパターンを増やす一因です。しかし、建物は土地に対する権利が無ければ存在できないことから問題を複雑にしている部分もあります。
抵当権が設定されている土地が競売となったとき、その土地上に建物がある場合にはどのようなことになるのでしょうか。
建物は土地に対する権利が必要
建物が建物として存続するためには土地に対する権利が必要です。所有権が一般的ですが、借地権であったり使用借権であったりすることもあります。もし、土地に対する権利を失ってしまったり、そもそも権利が無いのに建物を建てたりしていると、土地の所有者は建物の所有者に対し建物を撤去することを要求することができます。
それでは土地の上に何も建っていない更地に設定した抵当権を実行して競売を行う場合に、抵当権設定後建物が建てられていた場合には建物はどうなるのでしょうか。競売によって土地を取得した競落人は、自己の土地の所有権に基づき建物所有者に解体撤去を要求することができるのでしょうか。
一括競売
更地の状態で抵当権を設定した債権者は、更地の状態の価値で担保を設定したのであり、土地上に建物が建てられることによって価値が減じてしまうと債権者の不測の損害を与えることになります。
しかし、土地のみの競売を行うことによって、土地と建物の所有者が異なることで競落人から建物所有者に対して建物の解体撤去の要求を認めるとなると、予定外の紛争の発生や経済的な損失が発生することになります。したがって一定の条件を満たした場合には一括競売といって土地にしか抵当権を設定していなくても土地と抵当権の設定の無い建物を一緒に競売に供することを法律では認めています。
一括競売を行うための条件は、土地に抵当権を設定した時に土地の上に建物が無いこと、土地上に建物が建築されたのは土地の抵当権設定後であることです。
なお、一括競売にするかどうかは競売の申立人が選択することができます。
却代金の扱い
一括競売を行うことで土地と建物が一緒に売却されるため、競落の代金には土地だけでなく建物の代金が含まれることになり、競落人は土地と建物の所有権を取得することになります。債権者の権利はあくまで土地に対する抵当権なので、売却代金のうち建物相当額は配当の対象とはなりません。建物所有者に建物の売却代金として渡されることになります。
したがって抵当権の設定のある土地上に建物を建てる場合には、抵当権の設定をしなくても一括競売という制度の対象になる可能性があるということを認識しておく必要があります。